『百器徒然袋』
『百器徒然袋』より「文車妖妃」 歌に、古しへの文見し人のたまなれやおもへばあかぬ白魚となりけり かしこき聖のふみに心をとめしさへかくのごとし ましてや執着のおもひをこめし千束の玉章には、かゝるあやしきかたちをもあらはしぬべしと、夢の中におもひ…
『百器徒然袋』より「ばけの皮衣」 三千年を経たる狐、藻艸をかぶりて北斗を拝し、美女と化するよし、唐のふみに見へしはこれなめりと、夢のうちにおもひぬ ばけの皮衣は、三千年を生きた狐が美女に化けた妖怪。 解説文は、 「三千年を経たる狐、藻艸をかぶ…
『百器徒然袋』より「三味長老」 諺に沙弥から長老にはなられずとは、沙弥渇食のいやしきより、国師長老の尊にはいたりがたきのたとへなれども、是はこの芸にかんのうなる人の此みちの長たるものと用ひられしその人の器の精なるべしと、夢の中に思ひぬ 三味…
『百器徒然袋』より「箒神」 野わけはしたなく吹けるあした、林かんに酒をあたたむるとて、朝きよめの仕丁のはきあつめぬるははきにやと、夢心におもひぬ 箒神は文字通り箒に宿った付喪神の妖怪。 正しくは「ははきがみ」だが、「ほうきがみ」でも大丈夫。 …
『百器徒然袋』より「雲外鏡」 照魔鏡と言へるは、もろもろの怪しき物の形をうつすよしなれば、その影のうつれるにやとおもひしに、動出るまゝに、此かゞみの妖怪なりと、夢の中におもひぬ ペロリと舌をのぞかせた、可愛い鏡の妖怪「雲外鏡」。 石燕が解説文…
『百器徒然袋』より「如意自在」 如意は痒きところをかくに、おのれがおもふところにとゞきて心のごとくなるよりの名なれば、かく爪のながきも痒きところへ手のとゞきたるばけやうかなと、夢心に思ひぬ 如意自在は『百器徒然袋』に描かれている如意の付喪神…
『百器徒然袋』より「襟立衣」 彦山の豊前坊、白峯の相模坊、大山の伯耆坊、いづなの三郎、冨士太郎、その外木の葉天狗まで、羽団扇の風にしたがひなびくくらまの山の僧正坊のゑり立衣なるべしと、夢心におもひぬ 襟立衣は、鞍馬山に住む、牛若丸に剣術を教…
『百器徒然袋』より「琵琶牧々」 玄上牧馬と言へる琵琶はいにしへの名器にして、ふしぎたびたびありければ、そのぼく馬のびはの転にして、ぼくぼくと言ふにやと、夢のうちにおもひぬ ちょいと待ってよあんたぁ! ーーな格好がなんとも女々しくて可愛い琵琶の…
『百器徒然袋』より「髪鬼」 身体髪膚は父はゝの遺躰なるを、千すじの落髪を泥土に汚したる罪に、かゝるくるしみをうくるなりと言ふを、夢ごゝろにおぼへぬ 毛だらけ過ぎて髪なんだか鬼なんだか毛なんだかよくわからない妖怪。 石燕の解説文によれば、どうや…
『百器徒然袋』より「骨傘」 北海に鴟吻と言へる魚あり かしらは龍のごとく、からだは魚に似て、よく雲をおこし雨をふらすと このからかさも雨のゑんによりてかゝる形をあらはせしにやと、夢のうちにおもひぬ 骨傘は唐傘の付喪神化した妖怪。 骨傘と書いて「…
『百器徒然袋』より「木魚達磨」 杖払木魚客板など、禅床ふだんの仏具なれば、かゝるすがたにもばけぬべし 払子守とおなじきものかと、夢のうちにおもひぬ 木魚達磨は付喪神盛りだくさんな鳥山石燕の『百器徒然袋』に描かれている木魚の妖怪。 石燕の解説文…
『百器徒然袋』より「天井嘗』 天井の高は燈くろうして冬さむしと言へども、これ家さくの故にもあらず まつたく此怪のなすわざにて、ぞつとするなるべしと、夢のうちにおもひぬ なんのことは無い天井をペロペロ嘗めてくれる妖怪である。 古い時代の家屋は、…
『百器徒然袋』より「弊六」 花のみやこに社さだめず、あらぶるこゝろまします、神のさわぎ出給ひしにやと、夢心におもひぬ 御幣をばら撒きながら練り歩く謎多き妖怪。 例の如く石燕の『百器徒然袋』は創作妖怪の宝庫である為、弊六も創作だと思われる。 何…
塵塚怪王 『百器徒然袋』より「塵塚怪王」 それ森羅万象およそかたちをなせるものに長たるものなきことなし 麟は獣の長、鳳は禽の長たるよしなれば、このちりづか怪王はちりつもりてなれる山姥とうの長なるべしと、夢のうちにおもひぬ 鳥山石燕の妖怪画シリ…
『百器徒然袋』より「鈴彦姫」 かくれし神を出し奉んとて岩戸のまへにて神楽を奏し給ひし天鈿女のいにしへもこひしく、夢心におもひぬ 神を呼び降ろす為の儀式に用いられた鈴が付喪神となった妖怪。 石燕の解説文には、天照大御神を天岩戸から出す為に神楽を…
『百器徒然袋』より「沓頬」 鄭瓜州の瓜田に怪ありて、瓜を喰ふ霊隠寺に僧これをきゝて符をあたふ 是を瓜田にかくに、怪ながくいたらず のち其符をひらき見るに、李下不正冠の五字ありと かつてこの怪にやと、夢のうちにおもひぬ 石燕の創作妖怪盛りだくさん…