雲外鏡(うんがいきょう)
『百器徒然袋』より「雲外鏡」
照魔鏡と言へるは、もろもろの怪しき物の形をうつすよしなれば、その影のうつれるにやとおもひしに、動出るまゝに、此かゞみの妖怪なりと、夢の中におもひぬ
ペロリと舌をのぞかせた、可愛い鏡の妖怪「雲外鏡」。
石燕が解説文で触れている照魔鏡とは、人の魔性を映し出したり、妖魔の姿を見破ったりする鏡のこと。
では一体この雲外鏡に浮かび上がっている舌出しっ子は何を映したものなのだろうか?
これはもしかしたら人の邪心そのものを映したモノなのかも知れない。なんちゃって。
鏡が僕は苦手である。
いつ見てもそこに映るのは「自分とは思えない誰か」だからだ。
それは妖気纏う妖怪の姿であり、気持ちは十代なのにすっかりおっさんの風貌になりつつある僕の姿などではないのだ。きっと。
因みに、雲外鏡という名前は中国の書であり、様々な妖怪の名前も出てくる「山海経(せんがいきょう)」から取ったとの説もある。
なるほど書もまた人を映す鏡のようなものか……と思えば成程と思える。少しは。