あやかし
『今昔百鬼拾遺』より「あやかし」
西国の海上に船のかゝり居る時、ながきもの船こえて二三日もやまざる事あり
油の出る事おびたゞし
船人力をきはめて此油をくみほせば害なし
しからざれば船沈む
是あやかしのつきたる也
あやかしとは、海上に現れる妖怪、または怪異を指す総称のようなものである。
昨今、妖怪を指す言葉として「妖(あやかし)」と使われている場合もあるが、ここでは海上の怪異としてのあやかしである。
少しややこしいのだが、石燕が「あやかし」の名で描いたこの妖怪は、「イクチ」という海に棲む巨大妖怪の事である。海上妖怪代表的にイクチを「あやかし」と紹介したのかも知れない。
このイクチという妖怪は、石燕の書いているように「ーーながきもの船をこえて二三日もやまざる事あり。油の出る事おびたゞし。舟人力をきはめて此油をくみほせば害なし。しからざれば船沈む。是あやかしのつきたる也」
とあり、まずとにかくデカく(通過に二三日かかる)、油を噴き出しながら移動する(油を汲み捨てながらじゃないと下手すりゃ沈むレベル)、デカくて汚い巨大妖怪なのである。
このイクチに限らずだが、海の中の生物は判明していない事が多い為、実在する可能性が他の妖怪に比べて高い気がする。
人型妖怪も楽しいけれど、海の妖怪もなかなかロマンである。