蜃気楼(しんきろう)
『今昔百鬼拾遺』より「蜃気楼」
史記の天官書にいはく、海旁蜃気は楼台に象ると云々
蜃とは大蛤なり
海上に気をふきて、楼閣城市のかたちをなす
これを蜃気楼と名づく
又海市とも云
蜃気楼は妖怪というよりも怪異である。また、あなたが頭に思い描いた、遠くにあるはずのない物が見えるアノ蜃気楼と同じ現象である。
今でこそ空気の温度差による光の屈折がもたらす現象と解明されているが、昔はもちろんそんなの解らなかった。
そして石燕の画中解説文にも、
「蜃とは大蛤(おおはまぐり)なり。海上に気をふきて、楼閣城市のかたちをなす」
とあるように、蜃という大きな蛤が吐き出す息が産みだす幻だと昔は考えられていた。因みにこれは中国に伝わる伝承で(『史記』という名の天官書に書いてある)、それが日本にも伝わり、今でも「蜃気楼」という名前にモロ名残がある。
また、蜃気楼の事を「貝やぐら」とも言うが、これは蜃気楼の「蜃」と「楼」をそれぞれ訓読みした読み方である。
なぜ蛤が正体とされてきたかについては、アスファルト等の無い時代では蜃気楼は主に海上に現れる怪異だったからではないだろうか。
――話はめっちゃ逸れるが、三丁目の夕日などで有名な漫画家の西岸良平氏の作品で、『蜃気郎』という漫画がある。怪盗蜃気郎が主人公で、西岸作品らしく人間味溢れる調子がすごく好きで、僕はよく父親の本棚からパクって読みふけっていた。
オススメ漫画です! ……ってほんとに逸れ過ぎた。