妖怪うぃき的妖怪図鑑

妖怪うぃきから産まれた妖怪図鑑ブログ。妖怪の原点に触れ、もっと魑魅魍魎を知るきっかけになれば幸いです。

『和漢百物語』

天下三大美少年の一人「不破伴作」

『和漢百物語』より「不破伴作」 高下駄を履き、傘に飛びつく妖怪にキリっと見栄を切るのは不破伴作(ふわばんさく)という男。 この不破さん、かの太閤豊臣秀吉の事を書いた『太閤記』にも登場する実在の人物。豊臣秀次に仕えたが、十八歳という若さで切腹…

怪力女! 伊賀局(いがのつぼね)

『和漢百物語』より「伊賀局」 亡霊が現れてもものともせずあっけらかんとした顔で「あんた誰?」と聞くのは伊賀の局という、後醍醐天皇の寵妃に仕えた女性。 しかしただの女ではなく、川に架かる橋が壊れてしまった際に大木をへし折り橋を作ってしまったと…

鷺池平九郎(さぎのいけへいくろう)

『和漢百物語』より「鷺池平九郎」 名前こそ仰々しいが、鷺池平九郎は河内国の普通の農夫である。 しかしながら楠木正行に仕えた武将として『楠木正行戦功図会』に大々的に書かれたことから、一躍武者絵で描かれる人物となった。 実在した人物ではないようだ…

象を背に弓を引く「将武(しょうぶ)」

『和漢百物語』より「将武」 将武は中国の弓術に秀で、狩猟を生業としていた武人である。 パッと見「武将」に見えるが、逆。 尚、日本にも平将武なる平氏の武将がいるのだが、それとは無関係である。 さて、この絵がどういうシーンかというとーー 将武の元に…

河童に稽古「白藤源太」

『和漢百物語』より「白藤源太」 河童の相撲を上から悠々と団扇を扇ぎながら眺めている力士、白藤源太。 この白藤源太は歌舞伎や謡曲などでよく登場した、伝説上の力士である。 しかし歌舞伎などの最強力士な設定とは裏腹に、実在した白藤源太は結構悲惨な運…

ザ・悪者「仁木弾正直則」

『和漢百物語』より「仁木弾正直則」 足下のネズミをキッと睨んでこっそり懐で印を結ぶは仁木弾正直則(にっきだんじょうなおのり)。 勘違いしやすいが、足下のネズミは直則が呪いをかけたとか、直則と戦っているとかではなく、直則が化けた姿だということ。…

雷嫌いな秀吉さん 『和漢百物語』真柴大領久吉公

『和漢百物語』より「真柴大領久吉公」 有りえない軌道を描いて降り注ぐ真っ赤な雷は、月岡芳年のセンスを感じる。 こちらの「真柴大領久吉公(ましばだいりょうひさよしこう)」は、かの有名な羽柴(豊臣)秀吉の逸話を描いたもの。 画中解説文にもあるよう…

入雲龍公孫勝(にゅううんりゅうこうそんしょう)

『和漢百物語』より「入雲龍公孫勝」 風よ吹け! 嵐よ怒れ! 龍よ出でよ!! まさにそう言わんとしているかのような荒々しい海でカメラ目線で祈るは中国『水滸伝』の英雄の一人である公孫勝。 この芳年の『和漢百物語』における数少ない中国の物語を描いた作…

太公望の最終兵器「雷震」

『和漢百物語』より「雷震」 封神演義で有名な太公望の名は、多くの人が一度は聞いた事があると思う。 この月岡芳年のシリーズ『和漢百物語』は、タイトルの通り和漢の物語をモチーフにした絵を描いており、この「雷震」などは中国からの物語である。 舞台は…

月岡芳年『和漢百物語』楠多門丸正行(くすのきたもんまるまさつら)

『和漢百物語』より「楠多門丸正行」 楠多門丸正行(くすのきたもんまるまさつら)は、かの南北朝時代の有名武将、楠木正成(くすのきまさしげ)の息子である。 楠木正成は南北朝の闘いで足利尊氏を相手に奮闘した人物だが、後に勝利することになる北朝方に…

姑獲鳥と産女と卜部季武

『和漢百物語』より「主馬介ト部季武」 酒呑童子討伐や土蜘蛛退治で有名な源頼光四天王のひとり、卜部季武。 うらべのすえたけ、という読みはテストに出るので覚えて欲しい。前も書いたが、戸次鑑連(べつきあきつら)級の読めない名前である。因みに戸次鑑…

月岡芳年『和漢百物語』左馬之助光年

『和漢百物語』より「左馬之助光年」 明智左馬之介、と言えばピンと来る方もいるだろう。 この左馬之助光年(さまのすけみつとし)は、本能寺の変を起こした事でも有名な明智光秀の右腕的重臣であった人物。明智秀満が正しい名前。 妻は光秀の娘である。 そう…

月岡芳年『和漢百物語』瀬田之竜女 田原藤太秀郷

『和漢百物語』より「瀬田之竜女 田原藤太秀郷」 弓を構えるは平将門を打ち取った男としても有名な田原藤太秀郷(たわらのとうたひでさと)。 俵藤太という通り名の方が有名かも知れない。 その名前の由来もまた、芳年が↑で描いた逸話と関係がある。 ここで…

九尾の狐はインドにも 和漢百物語「華陽夫人(かようふじん)」

和漢百物語より「華陽夫人」 白面金毛九尾の狐といえば、日本で最も有名なのは玉藻前になると思う。 しかし古来親しまれてきた九尾の狐伝説は、実は三国に跨っている。 日本の玉藻前、中国の妲己、そしてインドの華陽夫人である。 共通しているのがどの国で…

月岡芳年『和漢百物語』頓欲ノ婆々

『和漢百物語』より「頓欲ノ婆々」 オーマイガッ! なスーパーリアクション婆ちゃん。このしわくちゃな婆ちゃんに見覚えは無いだろうか? そう、これは『新形三十六怪撰』でも同じシーンが描かれている、舌切り雀の強欲婆ちゃんである。 画中の解説文にも、 …

月岡芳年『和漢百物語』宮本無三四

『和漢百物語』より「宮本無三四」 バガボンドでもお馴染み。ご存知宮本武蔵(ここでは無三四)と天狗との対決を描いたこの絵。 「天狗との対決なんかしたっけ?」 と思う方もいると思う。 宮本武蔵と言えば、巌流島での佐々木小次郎との対決で有名で、さらに…

『和漢百物語』渡辺源治綱

『和漢百物語』より「渡辺源治綱」 源頼光四天王の中でも特に武勇に秀でていたのがこの渡辺綱(わたなべのつな)。 こちらの絵は以前石燕の羅生門鬼でも紹介した、羅生門での渡辺綱と鬼の激闘のシーン。芳年の斬新かつ奇抜すぎる絵のお蔭で、鬼の姿も見えずそ…

月岡芳年『和漢百物語』とは?

月岡芳年『和漢百物語』 月岡芳年が二十代半ばにして描いた、日本や中国の伝説をモチーフにした浮世絵版画。 「血まみれ芳年」等の異名を得ることになる無残絵も有名だが、妖怪達と戦う英雄を描くのも得意だった芳年。 この妖怪図鑑でも全て紹介することので…

がしゃどくろの裏の物語、大宅太郎光国

月岡芳年『和漢百物語』より「大宅太郎光国」 大宅太郎光国、と聞いてピンときた方はハッキリ言ってかなりの妖怪通。 実はこの男、あの「がしゃどくろ」のモデルとなったとされる国芳の絵、「相馬の古内裏」に描かれている人物である。 あの絵は、ある物語を…

妖怪にも屈さぬ横綱、小野川喜三郎

『和漢百物語』より「小野川喜三郎」 小野川喜三郎(おのがわきさぶろう)は志賀県出身の実在した力士。そして第五代横綱でもある。 当時人気のあった喜三郎は、妖怪退治の物語の主役とされて描かれることもあった。 月岡芳年の『和漢百物語』では、主人の屋…

節婦の霊滝に掛る図

『新形三十六怪撰』より「節婦の霊滝に掛る図」 この絵は有名な浄瑠璃の「箱根霊験躄仇討(はこねれいげんいざりのあだうち)」のクライマックスを描いたもの。 ざっとあらすじ書きます。 あるところに、勝五郎という父親を殺された不幸な男がいた。勝五郎はな…

蘭丸蘇鉄之怪ヲ見ル図

『新形三十六怪撰』より「蘭丸蘇鉄之怪ヲ見ル図」 この絵は、大阪府妙国寺に現在もある「大蘇鉄」(だいそてつ。蘇鉄とは、ヤシのような見た目の木)に纏わるエピソードを描いたもの。 戦国時代、時の権力者であった織田信長は、有名であった妙国寺の「大蘇鉄…

月岡芳年渾身の狂気に満ちた仁王像投げの図の謎

『新形三十六怪撰』より「蒲生貞秀臣土岐元貞甲州猪鼻山魔王投倒図」 この絵は、芳年作品の中でも特に狂気に満ちていると名高い一枚。 確かにタイトルも、絵も、色使いも、どこか常軌を逸したものになっている。 精神異常を再発する兆候が現れている絵だとも…

貞信公夜宮中に怪を懼しむの図

『新形三十六怪撰』より「貞信公夜宮中に怪を懼しむの図」 さて、月岡芳年の『新形三十六怪撰』からも妖怪画載せるぞ! と意気込んだものの、やり始めてみれば芳年にしろ歌川国芳にしろ、人物メインの絵が多くってどのようにカテゴライズすりゃいいのか解ら…

土蜘蛛(つちぐも)

『今昔画図続百鬼』より「土蜘蛛」 源頼光土蜘蛛を退治し給ひし事、児女のしる所也 土蜘蛛は、酒呑童子討伐でも有名な源頼光一行によって討伐された蜘蛛の妖怪。 鬼の顔に長い手足を持ち、糸を吐いて人間を搦め捕り、喰らうと言う。 『土蜘蛛草紙』を筆頭に…

酒呑童子(しゅてんどうじ)

『今昔画図続百鬼』より「酒顚童子」 大江山いく野の道に行かふ人の財宝を掠とりて、積たくはふる事山のごとし 輟耕録にいはゆる鬼贓の類なり むくつけき鬼の肘を枕とし、みめよき女にしゃくとらせ、自ら大盃をかたぶけて楽めり されどわらは髪に緋の袴きた…