布袋さんの教え『月百姿』より「悟道の月」
『月百姿』より「悟道の月」
日本では七福神の一人としても有名な布袋(ほてい)和尚。
妖怪の袋貉に似てなくもないが、妖怪ではない。
この布袋様は中国で実在したとされる伝説的僧である。契比(かいし)という禅僧がモデルで、契比がいつも布袋を背負っていたことから「布袋」と呼ばれるようになり、いつしか日本では七福神の一柱となった。
泣いて暮らすも一生。笑って暮らすも一生。同じ一生なら笑って暮らせ。
と説き、常に笑顔で描かれる布袋さんが縁起の良い七福神に入れたのはすごく自然だと思う。笑う門には福来る、のである。
絵については、いつものクールな芳年の絵とは少し違うユーモラスなタッチが面白い。
袋にドカっと寄りかかりながら、満面の笑みで月を指差す。
この絵には実は結構深い意味が込められていて、指先は些末な事に過ぎず、月が大きな事柄を指しているという。
つまり、「細かなことにとらわれ過ぎずに大局を見よ」ということである。
悪く言えばこの布袋様的考え方は「楽天的」だが、楽天的であるほうが多くの場合プラスに作用するような気がするので、一概に悪いこととは言えないのだろう。
笑って月を見上げて、細かなことは気にせず楽しく生きろ。
色んな意味の込められた実に縁起の良い一枚である。
尚、画題の「悟道の月」の悟道とは、字の通り悟りを得ることであり、悟りを得た者の楽観視なのだとしたら、やっぱりその方がいいのかしらん。