祭りの後に……『月百姿』より「神事残月」
『月百姿』より「神事残月」
祭りというのは「祀る」が元であり、いわば一つの儀式である。
出店や山車、またそれを楽しむ人々もまたその儀式に参加しているわけで、ちゃんと「祭り」しているわけである。
さて。お祭りというのは特に「この時期に!」というのは決まっておらず、それぞれの神社がそれぞれの祀っている神と関係のある日にやることが多い。
今日、僕も仕事中に店の前の道を、祭囃子と共に練り歩く山車を見かけ、ちょっとテンションが上がった。
一体どこの神社の祭りの神輿なのかは知らないけれど。
神社で生まれてドロップアウトオーバーザデステニーしちゃった僕は、もはや無縁とはいえやっぱりなんだか胸が躍り、同時に締め付けられるのである。
太鼓の音、お囃子の音。
僕にとっての祭りは、出店でも綿あめでもなく、その「音」である。
そんなこんなで今宵の『月百姿』からの一枚は、「神事残月」。
江戸三大祭りの一つと言われる日枝神社の山王祭りの御神輿の絵。
神々しい。
僕の実家の神社も先々週ぐらいに例大祭をやった筈。
普通なら長男の僕が継ぎ、神輿と共に練り歩くサダメであったのに、今年もきっと僕の弟がそれをやったのだろう。
去年の例大祭の時の写真を見たが、僕の弟は立派にその役目を果たしていた。
僕のオヤジ(神主)と、弟二人。
好き放題やった挙句極貧ド底辺を彷徨ってはいるが後悔はしていない。
でも、やっぱり例大祭の時期になると、あったかも知れない僕の別の人生を想わずにはいられないのだ。
お祭りをこのように複雑な感情で見つめる人物というのはそう多くはないのだろう。
いい歳になって、妖怪と出遭って、やっと宗教にも興味を持って、神道の事を調べたりもしている。
皮肉なものだ、なんて思ったり。
祭りの後の寂しさの中を歩き回っているかのような心持ち。
色々あるのだ。僕にも、あなたにも、誰にでも。