妖怪うぃき的妖怪図鑑

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角盥漱(つのはんぞう)

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『百器徒然袋』より「角盥漱」

なにを種とてうき艸のうかみもやらぬ小野の小町がそうしあらいの執心なるべしと、夢心におもひぬ

 

角盥漱は石燕の解説文によれば、小野小町が使用していた角盥(つのだらい)が妖怪化したものだと解る。

角盥とは、洗面器具の一つであり、石燕の文にもある「草紙洗い」という逸話において大活躍した。草紙洗いとは、小野小町でない人物が、小町の詩を勝手に自分の作ったものだと言い張ったのだが、小町が角盥漱にてその紙を洗ったところ、文字が全て流れ落ち、それがニセモノであることを証明したのだという。

 

小野小町と所縁のある角盥漱を石燕が妖怪として描いたのがこの角盥漱であろう。

 

余談だが、小野小町は未だに存在した確証の無い妖しい人物である。

能などで絶世の美女として表されるためか、小野小町=美人というイメージがあるかもしれないが、実は正面から小町を描いた絵などは少なく、結構疑わしいらしい。

例えば兼好法師なんかも、徒然草第百七十三段にて

「小野小町がこと、極めて定かならず」

と、比較的近い時代の兼好さんでさえよくわかんねーと書いている。

また、歌人としての優雅なイメージからは想像できないのだが、晩年の小町を描いた逸話には乞食になってしまった小町等、悲惨なものが多い。

 

石燕も妖怪にしちゃってるわけで……

 

花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに

by小野小町

 

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