鬼(おに)
『今昔画図続百鬼』より「鬼」
世に丑寅の方を鬼門といふ。
今鬼の形を画くには、頭に牛角をいたゞき腰に虎皮をまとふ。
是丑と寅との二つを合せてこの形をなせりといへり。
鬼は日本人なら誰もが知っている、虎柄パンツに二本角の妖怪である。
元は鬼は「おぬ」という読みで、姿の見えない、人智を超えた存在であるとされていた。漢字にすると「隠」である。
それが、仏教伝来や陰陽思想の伝来によって閻魔大王の手下というイメージの元で現在の鬼像が作られていった。
虎柄パンツと角は、鬼門があるとされる丑寅の方角に因み、牛の角に虎のパンツ、という像が作られた。平安時代ではすでにこのイメージが完成していたらしい。
鳥山石燕の描いた鬼の画中解説文にも、上に書いた鬼のイメージの由来がそのまま書いてある。
しかしこの説も唯一の答えというわけではなく、有名妖怪の性として沢山の説があり、沢山の複雑な解釈がある。
妖怪伝承上最も有名な鬼は、恐らく大江山の酒呑童子だろうか。酒呑童子物語のバリエーションの一つに、山に捨てられた童子が恨みで鬼へと化した、というものがある。そのように鬼は「恨みを持った人間のなれの果て」として描かれることも多い。
また、基本的に悪者で恐ろしい存在としてのイメージが強い鬼ではあるが、地域によっては鬼を守り神としていたりもする。
そんなわけで、鬼は一言では言い表せない、実は厄介で複雑な妖怪なのだ。