影を喰らう 影鰐(かげわに)
影鰐(かげわに)
影は、古今問わず様々な解釈のされる人間の重要な要素である。
光と影は表裏一体であり、そのどちらかが欠ければもう片方も存在することはできない。
影もまた、自分の投影であるから。
そして、そのような影を食べられてしまったとしたら……。
妖怪「影鰐」は、長野県に伝わる海の妖怪である。
鰐、とはサメの事を指している。
船乗りが船から身を乗り出した際に海上に映る影を、この影鰐は喰う。
影を喰われた者は必ず死んでしまうのだという。
仮に影鰐を撃ち殺すことに成功したとしても、陸に戻った際何らかの不幸が訪れ、やはり必ず死んでしまうのだという。
サメ系海の妖怪では、『絵本百物語』の「磯撫で」というヤツもいた。
サメ君は昔から変わらずに怖がられていたのだろう。
――ところで、至る所に照明がある現代、じっくり自分の影を見る機会というのが減っている気がする。
「今日の私の影」なんてタイトルで日記を付けて影観察しているような人は別だが、普通に生活していたら影なんて特に見ようとは思わない。
しかし、影も自分なのである。
たまには勇気を出して地面に映るもう一人の自分をじっくり見てみると、何か新しい発見があるかも知れない。
――で、今僕も自分の影を見てみたが、どういうわけか(照明の具合なんだけれど)影が三つぐらいあって戸惑った。
道理で最近心が安定しないわけだ!