妖怪うぃき的妖怪図鑑

妖怪うぃきから産まれた妖怪図鑑ブログ。妖怪の原点に触れ、もっと魑魅魍魎を知るきっかけになれば幸いです。

人形に宿る魂〜人形の霊〜

人形の霊

人の形をした人形に魂が宿りやすいというのは有名な話である。
人形には多くの奇談怪談があり、現代でも人形に宿る霊がモチーフになる作品は多い。
ここで一つ昔の人形の怪談をーー

あるところに住んでいた娘が、父親と共に見に行った浄瑠璃に出てきた人形に恋をしてしまった。娘は父親にねだり、その人形を買ってもらい、食事中も寝る時も、常にその人形と過ごした。
娘も年頃になり、流石に人形と過ごしてばかりではマズイ、ということで見合いの末結婚することになった。娘の大切にしてた人形は捨てて埋めてしまった。
結婚式の日。式中に突如、かつて娘が肌身離さず持っていたその人形が乱入してきて、娘の手にした盃を振り落として去って行くという事件が起きた。
唖然とする人々をよそに、娘は血相を変えてその人形を追いかけて行ってしまった。
家族達が必死で探すと、なんとかつて人形を埋めた筈の場所に、娘が土の中に手を突っ込む形で死んでいるのが発見された。
後にそこは「人形塚」と呼ばれ、娘と人形一緒に弔われたのだという。

ーーこの手の話は、昔話と片付けるわけにはいかない現代に通ずる点が多くある。現代ではさらに精巧な人形を好んで部屋に置いている者もいるわけで、そういった人形に魂が宿らぬはずがない。

実は、僕の部屋でも人形の怪異は起きている。
かつての恋人がプレゼントしてくれたぬいぐるみがあり、僕もお気に入りだった。別れてからも特に捨てたりはせず枕元に置いたままになっているのだが、冗談ではなく表情が変わっていると思う時がある。
別れはしたが特に不仲ではなく、たまに連絡を取り合うのだが、一時期全くメールも電話もしない時期があった。その時、その人形の表情は少し曇って見えた。
最近、また仕事の愚痴などを聞いてやったりで連絡が来るようになり、仲も良い。と、そのぬいぐるみの表情が少し明るくなったのだ。
もちろん、それがただの思い込みである可能性の方が高いと思う。しかし、表情が変わった気がするのも確かなのだ。
最高に仲の良かった時に買ったそのぬいぐるみには、僕と恋人との魂が入っていて、時に双方の感情の変化に呼応してその表情を変えている……とか。
あるいは、人形も妖怪が心に湧くのと同じように、自らの心を映す鏡として機能することがある、というだけかもしれない。

今日帰ったらホコリぐらい取ってやろう。