猪口暮露(ちょくぼろん)
『百器徒然袋』より「猪口暮露」
猪口暮露は、猪口を被った妖怪達。単体ではなくわらわらと描かれている。
もちろん猪口とはお酒を飲んだりする際に使うあの「おちょこ」である。
石燕の解説文は以下の通り↓
「明皇あるとき書を見給ふに、御机の上に小童あらはる。明皇叱したまへば 臣はこれ墨の精なりと奏してきへうせけるよし。此怪もその類かと、夢のうちにおもひぬ」
明皇とは中国(唐)の第九代皇帝の玄宗皇帝(至道大聖大明孝皇帝)のこと。楊貴妃を寵愛しすぎて戦争起こしちゃった人。
その玄宗が本を読んでいた際に子鬼が現れ、それを臣が「墨の精でごじゃる」と説明し、この猪口暮露もそういう感じの妖怪なんじゃなかろうか? と石燕は書いている。
因みに猪口暮露の暮露の部分は、暮露々々団(ぼろぼろとん)でも書いたように禅宗の虚無僧の事。
成程虚無僧の様に猪口を被っちゃったのがこの猪口暮露というわけか。
余談だが、猪口と書くのはイノシシの口に似ているからではない。そもそも漢字を当てていたわけでは無く、この猪口という漢字は強引に当てられた字らしい。由来は諸説あり、朝鮮音で「チョング」が転じたというものまであるが、どれも確証が無いらしい。
もうメンドクセーからちょこっとの「ちょこ」だよ、を答えにしちゃえばいいのに――なんて夢で酒飲みながらおもひぬ。