朧車(おぼろぐるま)
『今昔百鬼拾遺』より「朧車」
むかし賀茂の大路をおぼろ夜に車のきしる音しけり
出てみれば異形のもの也
車争の遺恨にや
朧車は、牛車の荷台に恐ろしい女の顔が浮かんだ、牛車の妖怪。
石燕の解説文には、賀茂の大路(現在の京都、加茂)に夜現れたという。
かつての車争い(牛車による、貴族達の場所取り合戦のようなもの)の怨みによって生まれた妖怪だというが、そんなに車争いに負けたのが悔しかったのだろうか?
今の感覚では理解できない、貴族ならではの激しいプライドのぶつかり合いがあったのかも知れない。
なるほど、石燕の描いた朧車がやけに嬉しそうなドヤ顔なのも、ようやく場所取りできたからか。
それで満足できるのなら、いくらでも夜に場所取りして早々に成仏していただきたいものである。
因みに、名前の「朧車」の通り、なんだか薄ぼんやりとした朧気な実体なのだという。
そんなに悔しかったのならがっつり出てこい!!
祟られるかしらん……