金槌坊(かなづちぼう)
『百鬼夜行絵巻』(松井文庫所蔵)より「金槌坊」
金槌坊は、金槌をふりかざした鳥の妖怪。
様々な説が説かれる金槌坊だが、「石橋を叩いて渡る」という言葉があるように、この金槌坊も臆病で慎重な妖怪なんじゃないだろうか? とする説が僕は好き。
髪型もビシっとキメており、さながら現代のDQN少年の暴走に見えないことも無い。
因みに、妖怪画というのは多くの妖怪が何度も繰り返し模写されることでその姿を保ち、受け継がれている。
名前が変わってしまうケースも多いのだが、とにかく似た特徴は後世に伝わるのである。
例えばこの金槌坊、非常に似ている妖怪がいくつかある。
上は鳥山石燕の『百器徒然袋』の「槍毛長(やりけちょう)、虎隠良(こいんりょう)、禅釜尚(ぜんふしょう)」である。
この中の「槍毛長」は、頭こそ違っているもののポーズなどはほぼ同じである。
更に、『百鬼夜行絵巻』の真珠庵本にも、
上のような、黒くてキモイがかなり金槌坊に似ている妖怪が確認できる。
あと、これは僕の勝手な推測だが、金槌坊はきっと水泳が苦手である。
……話を戻して。
上の画像で解っていただけたかと思うが、本当に妖怪画は名前は違っても姿かたちがそっくりなものが多く存在する。
そういうのを探してみて、更にルーツはどちらなのかを調べてみるのもこれまた新しい妖怪さんとの遊び方としていいんじゃないだろうか?
因みに上記画像で金槌坊のルーツを探ると、石燕は江戸時代の絵師、松井文庫版の百鬼夜行絵巻も江戸時代、しかし真珠庵本は室町時代なので、現状ではルーツと呼べるのは真珠庵本の百鬼夜行絵巻ということになりそうだ。