赤シャグマはなぜくすぐるのか
赤シャグマ(あかしゃぐま)
四国の広い範囲に伝わっている、座敷童にも似た性質を持つ妖怪、赤シャグマ。
赤シャグマがいると家は繁栄し、いなくなると衰退する――なんていう座敷童と同じ伝承もある。
まぁ名前からして赤いのは想像できるが、なぜかこの赤シャグマは「くすぐる」という共通点を持っている。
眠っている人の足の裏をくすぐるだとか、寝ている人をくたくたになるまでくすぐり続けるだとか、とにかくコイツはくすぐるのである。
座敷童だから悪戯するというのは解るが、わざわざくすぐりに限定しているのはきっと何か理由があるに違いないのである。
ヒントになりそうなのは名前ぐらいなものなので名前を追求していこうと思うが、そもそもシャグマっつぅのがなんなのか?
どうやらこれは赤熊(しゃぐま)のことで、仏具の払子や、戦国時代のカツラ? のような物を指すらしい。
例えば鍋島 清久(なべしま きよひさ)という武将は、合戦では目立っちゃうしあまりメリットのないシャグマを被って出陣し、敵に「すわ妖怪が出た」と恐怖心を与えたのだとか。
因みに赤熊はヤクの毛を使うので日本では材料が取れない。故に大陸から輸入をしていたようだ。
赤熊が名前に入っている妖怪だし、もしかして「なんだかくすぐったそう」という連想から生まれたか? なんて思いもしたが流石にそれは早計か。
そこで思いついたのが、四国のこの赤シャグマの伝承は、もっと違うニュアンスを含んだモノなんじゃないのか? ということ。
シャグマについて調べてみたら、どうやら幕末あたりでの江戸城接収の折、蔵されていたヤクの毛は分配され、黒毛が薩摩藩へ、白毛が長州藩へ、そして赤毛が土佐藩へと渡ったのだそうだ。
それぞれの藩はその色の毛で軍帽を拵え、威厳を示したわけだが、なるほどちょうど土佐藩は赤い毛、シャグマの軍帽を作ったわけである。
ところが。
後に高知県となる土佐藩領土、なんと四国の内でこの高知県にだけは赤シャグマの伝承が無いのである。
ん? 何か妖しい。
つまり、こういう推測が成り立つのではないだろうか。
――土佐藩藩主山内氏。四国内でもその評判は高く、けどたまにちょっとウザかったりもした(この辺は調べてないけど)。
結構近隣諸国を困らせることも多かったけれど、いないと困る座敷童な存在。
後年、幕末に入ると、土佐藩は赤熊の軍帽での知名度が上がった。そして人々は妖怪赤シャグマとしてその武勇を語り継いでいったのである。
まとめで書いてみたら「絶対違うだろ」と思えて来たのでもうわからん。
というか、もっと謎な部分がある。
シャグマはそもそも「赤熊」なのに、なぜ更に赤をくっつける必要があるのか? ということ。
直訳したら「赤赤熊」である。赤すぎるのだ。
そうなってくると、そもそもシャグマ=赤熊が違うんじゃね? とも思えてくる。方言だとか、仏教用語だとか。
くすぐったい。