便意と妖怪倉ぼっこ(くらぼっこ)
倉ぼっこ
倉ぼっこは倉に居座る妖怪である。
しかしながら正直な所「倉」のある家に住む者は少ないと思うから、あまり馴染みの無い妖怪だとも思う。
倉ぼっこは人に悪さをするような妖怪ではなく、どちらかと言うと倉の守り神のような妖怪で、倉ぼっこが去ってしまった倉を持つ酒屋などはどんどんと廃れていくというのだがから座敷童のようでもある(倉ぼっこは倉童子と呼ばれることもある)。
また、柳田國男の『妖怪談義』のザシキワラシの項には、江戸は本所に現れたとされるクラボッコのことが書いてある。
それによると、土蔵に入って便意を催したならそれはクラボッコが現れる前兆であるから、慌てて土蔵を飛び出した――とある。
便意と倉ぼっこがどうして関係しているのかは解らないが、もしただ便意を催しただけであったら倉ぼっこはかわいそうである。
倉はわかるが、さてでは「ぼっこ」とは何のこっちゃ?
と思い調べてみると、北海道では方言で棒切れの事を「ぼっこ」と呼ぶらしい。
成程そういえば水木先生の描いた「倉ぼっこ」は長い木の棒を持っている。
しかし倉の木の棒ではいまいちピンと来ないので、同じく倉ぼっこが現れるとされる岩手県の方言も調べてみると、赤ん坊の事を「おぼっこ」と言う地域があるらしい。
倉のおぼっこ――倉の赤ん坊。こちらのほうがしっくりくる。
倉童子とも呼ばれていることからも、恐らくはおぼっこがぼっこの語源になっているのだろうと思う。
――ところで、本屋でも立ち読みしてるとよく便意を催す。
これは一体何ぼっこが現れる前兆なのだろう?