なんてこったい座敷童子(ざしきわらし)
座敷童子(ざしきわらし)
なんてこったい!
随分長い事この妖怪図鑑を更新しつづけ、一般的に有名な妖怪さんはほとんど紹介したべよ、と思っていたのに座敷童子がいないことに気付いた。
なんてこったい!
だが、今まで座敷童子をスルーしてきた理由が、いざ今書こうと思った段階で解ってしまった。
「そうだ、この小僧、くっそめんどくさいンだった……」
座敷童子のメイン生息地である東北地方に背を向けて、このまま「そうだ、京都、行こう」と行く金もないのにネットでプラン立ててニヤニヤしたい気分であるが、ここは腹を括って童子クン(チャン)と見つめ合うことにする。
座敷童子の一般的だと思われる知識は、「それが出る家には幸運が訪れる」とか、「逢えたら出世する」とかだろうと思う。
実際に東北には今も「座敷童子が出る」という旅館が存在しており、それらいくつかの旅館ではいつだって予約が一杯らしい。
座敷童子のメイン生息地は東北――とさっき書いたが、これは名前の話で、東北地方では座敷童子として伝わっているが、似たような妖怪は全国にいる。
座敷童子の別名をざっと列挙してみると、
座敷ぼっこ、蔵ぼっこ、部屋ぼっこ、唐子わらし、二階わらし、米搗きわらし、働きわらし、座敷ばっこ、座敷もっこ、座敷童衆、ノタバリコ、臼負い子、などなど。
また、現岩手県遠野市に伝わる怪異などで有名な柳田國男の『遠野物語』にも「ザシキワラシ」という名で出てくる。
『遠野物語』で書かれているザシキワラシは、男の子であるものと、女の子(しかも二人)であるバージョンが書かれていて、男の子の方は家に住みついている座敷ワラシで、それによりその家は大いに富を得た、とある。
しかし女の子バージョンでは、見慣れぬ少女二人に「どこへ行くんだい?」と村人が訪ね、少女たちは立派な家の豪農の名を出した。村人は、「その豪農は世も末だ」と思ったのだが、その通り、しばらくしてその豪農の家は食中毒と病気で全員死に絶えた――という内容で、座敷ワラシが「不幸をもたらすモノ」として書かれている。
貧乏神のような性質。むしろ↑に書いた女の子二人組の座敷ワラシスターズは死神と言っても過言ではない。
また、男の子バージョンは家に代々住みつき富を授けているし、別の話では人に付いて移って行くとも言う。こうなると「憑きもの」である。
また別の説では、河童がいたずらで人の家に座敷童子として住みつく――なんて説もある。ただでさえ複雑な座敷童に、複雑界の王者「河童」さんまで関わって来たらもう人類はお手上げである。
――ほらね、めんどくさい小僧でしょう。
さて。
冒頭で書いた「座敷童子に逢える」旅館では、実際に会ったり、金縛りが起きたり、その旅館に泊まった後からいいことが続いたりするらしい。
井上円了的に言えば「それ気のせい。会ったの幻覚。金縛りは思い込みと疲れじゃん? っていうかその旅館が座敷童が出ることで有名、って知らなかったらそんなこと起きなかったよね、きっと。そゆこと」な感じになっちゃうのだろうが、何の理由も無く座敷童子が出る! と謳っているわけではないと思うので、僕もいつか行ってみたいと思う。
とにかく!
座敷童子は未だ正体のわからない非常に複雑な歴史を持つ(であろう)妖怪なのである。