親切な松茸の化物
松茸の化物(まつたけのばけもの)
怖くない。安直。むしろ可愛い。ぽこ〇ん。
さぁあなたはこの妖怪を見てなんと思っただろうか?
何を隠そう、この妖怪は「松茸の化物」なのである!
……。
でしょうね!
珍しく黄表紙(江戸時代の漫画みたいなもんと思っとけばおk)からの紹介だが、この松茸の化け物は『怪談豆人形』に出てくる、こう見えてイイヤツな妖怪である。
『怪談豆人形』は、小さな化け物達が日本で大物の化け物になるべく行脚するのだが、化物の先輩達にいじめられて結局最後は江戸を去っちゃうお話。
黄表紙はめちゃくちゃな設定がとにかく面白いわけだが、まさか松茸に手足を生やすとは思わなかった。
さてこの松茸の化け物は、三保の松原を小化物達が通りがかった時に現れた。
松茸「なんだおめぇらちっちぇな」
小「私達は小人島から来た化け物です」
松茸の化け物はやけに親切で、小化物達に丁寧に箱根(を目指しているので)までの道を教えてくれる。
松茸「貴様たちはまずナリが小さいから人が怖がらぬのだ」
小「そのとうりで御座います」
口はきついが優しい松茸の化物は「頑張って修行に励めよ!」と言い小化物を送り出す。
『怪談豆人形』での松茸の化物とのやりとりはこれしかないのだが、とにかく小化物達に優しくしてくれたのはこの松茸サンだけなのである。
なぜ松茸なのか?
――松茸の化物が出た三保の松原と言えば、羽衣伝説で有名である。富士も良く見え、松も茂るから、松茸の化物が出ても不思議ではない。
富士をもっとよく見よう、よく見よう、と頑張った結果バケモノになってしまったのかも知れない――なんていう綺麗な推測はいらない?
ちょっと前にんふんふななめこブームがあったが、なぜ松茸の化物も便乗できなかったのか不思議でならないが、もうぶっちゃけ書くこともないので最後に正岡子規の松茸の句でも詠んで撤退したいと思う。
松茸は にくし茶茸は 可愛らし