金の神の火に見る幻想と現実
金の神の火(かねのかみのひ)
ざわ…… ざわ……
ざわ…… ざわ……
伊予(愛媛)の怒和島では、大晦日のある神社の裏で、ざわざわと騒がしい音がすることがあるのだと言う。
それはまるで人がわめいている音のようであり、人々はそれを「歳徳神がいらっしゃった」と考えていた。
丸く大きく明るい火の玉のような神であり、それを見れば金持ちになれるのだ。
鳥山石燕も金霊という妖怪を書いていたが、似たようなものだろうと思う。
また、九州は天草にも現れると云われ、そっちは力比べをしようとしてくるらしい。
とにかく、この金の神の火にさえ会えれば! 大金が得られることが確定するのだ!
皆様一緒に探しましょう。金の神の火を捕まえに、いざ四国へ乗り込みましょう!
ハッ!?
あぶないあぶない。妖怪に自分のお財布までも預けてしまうところだった。
でもお金持ちになれる系妖怪って、裏にこめられた教訓とか無視して考えれば、夢があると思うのだ。
貧乏人の味方な感じがするのだ。
いつまでたっても貯金もできない。このままでは……
金が全てじゃない。でも……
だとしたら……お金がないということは……。
――だから、金の神の火と出会い、気付けばいつの間にか大金を手にしていて、食べたかったもの、欲しかったものを全て得て、恋人を作り、結婚して、子供を産み、素敵な庭のある和風な一軒家で読書しながらその生涯を終える……
たまには、そんな夢を見たっていいじゃないか。