板の鬼(いたのおに)
板の鬼
気持ちは解る。
板の鬼(笑) よわそう(笑) 興味湧かなすぎ(笑)
――モニター越しに多くのバッシングが聞こえてくるが、板の鬼は『今昔物語集』に書かれている由緒ある妖怪なのだ。
そして板の鬼の恐さは、ちょっと名前からは想像できないほどである。
――ある夏、武士二人が宿直にあたっている時、屋根の上に不審な「板」を見つけた。
「おい、あの板はなんだ?」
「なんだろう。とりあえずどう見ても板なのは解る」
二人が板についてあれこれ考えていると、突然その板が2メートルぐらいに伸びて飛び出し、武士二人に向かって飛んできた。
二人は咄嗟に刀を抜き、構えると、板は突然向きを変えて屋敷の中に飛んで行った。
するとしばらくして、屋敷の中からいくつもの苦しそうな声が聞こえ、すぐに静かになった。
二人の武士は慌てて屋敷内へと入ると、非番で寝ていた5人の武士達が、見るも無残に平らに押しつぶされて圧死していた。
その話を聞いた他の武士達は、「武士たるもの、常に刀を下げておらんとこのような凶事に遭うのだ」と言い合い、この事件以降は必ず刀を傍に置いて寝るようになったのだと言う。
――流石日本。鬼(妖怪)はとにかく何にでも化けるし、何に化けたところで人々は深く追求したりしないのだ。
『今昔物語集』では「されば、男となりなむ者は、なほ太刀、刀は身に具すべき物なり」と最後に書かれており、板は置いといてとにかくそれが言いたかったのであろう。
それよりも、僕は板が武士を圧死させたというその部分がとにかく怖い。
溺死焼死圧死がとにかく怖い僕には板に殺されるのだけは勘弁。ほんと勘弁。
『今昔物語集』は多くの有名な物語が載っており、フィクション、ノンフィクションも混在している。
平安時代は結構本気で、妖怪みたいなナニカがいたんじゃないか、と僕は信じているのだけれど――板の鬼だけはどうか創作であって欲しい。