ヤザイモン蛸
ヤザイモン蛸(やざいもんだこ)
タコは美味いがいかんせん高い。
かつて僕がたこ焼き作りにはまった時、初めてタコの値段の高さを知り、たこ焼きって高級料理じゃねぇかチキショー! なんて思ったものである。
しかしタコは歯ごたえがあり、うまい。
食べ物にも困った者なら、超巨大な妖怪ダコが昼寝でもしていようものなら、こっそり足の一本ぐらい切りたくもなると思う。
――というわけでヤザイモン蛸は、香川県に伝わる怪異で、八左兵門という男がまさに上に書いたようなことをやってのけた話である。
毎日お昼寝中の大蛸の足を一本ずつ切り取っては持ち帰っていたのだが、最後の一本を切ろうとしたその日、蛸がお怒りになり、八左兵門を海に引きずり込んでしまい、また素知らぬ顔で昼寝を再開したのだと言う。
一本になる前に怒りなさいよタコ助!
また、水木先生は似たような妖怪で「大蛸の足」という妖怪を書いている。
こっちの場合は主人公(?)は若い娘で、大蛸に気に入られて嫁に来いと言われてしまうというアブノーマルな展開になっている。
蛸が嫌がる娘を強引に説得しようと、毎晩暴風雨を起こすものだから、娘は条件付きで嫁に行くことを決意する。
「あんたのその八本足がキモくてイヤだから、二本になったらお嫁に行くわ」
という条件。
なるほどここから娘の反撃が始まるのかワクワク――なんて期待していると、なんのことはない足はしっかり切るけれども、二本になった所でしっかりと蛸に連れ去られてしまうのである。
「二本足になった蛸は人間の二足歩行の楽しさを知ってしまい、それ以来海に戻ることはなくなった。娘はしたり顔で毎日をタコ亭主と過ごしたのだと云う」
みたいなオチがよかったのに。
なんだか無性にタコさんウィンナーが恋しくなってきた。