どういうことだよ! 天づるし
天づるし(てんづるし)
山梨県は北巨摩郡に出たという妖怪、天づるし。
天井よりつつと素っ裸で降りてくるこの妖怪は、天井系の天井嘗や天井下と似たような妖怪だと思われる。
夜――何かの気配を感じ、辺りを見回すが……何もいない。
やれやれ気のせいか、と布団にもぐりこむと、天井に裸の子供のような妖怪が。
その妖怪はニヤニヤと笑いながらツツツ、と蜘蛛のように降りてくる。
さぁ一体どんな恐怖が訪れるのかと思いきや――妖怪はいつまでたっても何もしない。
いやいやじゃあ一体何の為に現れたんだ? と思うものの、元来妖怪なんていうものはそういうモノなのかも知れない、なんて考える。
しばらく怯えながら妖怪を見ていたのだが――やっぱりほんとに何もしない。
ただそこにいて、たまに天井の上にススス、と戻って行ってまたツツツ、と降りてくるだけなのだ。
しばらく身構えていたが、気付くと眠ってしまっていたようで朝になっていた。
さぁあの妖怪は何を残していった? 不幸が訪れるのか? それとも幸福か?
と不安と期待を感じていたにも関わらず、やはり何も変化は無かった。
どういうことだよ。
――ただ冷静になると、妖怪にはこの手の無害で何もしないやつというのは結構いるものである。
が、やっぱり妖怪には「それらしい」伝承やら怪談やらが付いていないと面白くないもので、結局娯楽になることが流行への道であることがよく解る。
僕なんかはこういう「どういうことだよ」な妖怪の方が、凄くシンプルだしありふれているし、ずっと妖怪らしいと思うのだけれど。
化け物寄りではなく、ほんとにわからん、目的も、存在意義すらもわからん、妖怪らしい妖怪。
自分で書いといてなんだが……この文章もどういうことだよ。