組体操婆と言えばこの方――小池婆(こいけばばあ)
小池婆(こいけばばあ)
全国の小池家の大婆様方、すみません。
小池婆は、↑の画像でかつて紹介した鍛冶が嬶(かじがばば)と似た逸話で有名な、オオカミのテッペンに登るババアシリーズの妖怪である。
小池婆は島根県に伝わっており、概要はざっくりと以下の通り。
――小池という名の武家に仕えるある男が、正月休みの帰省からまた戻る際、オオカミの群れに出くわした。
やべぇ食われると焦った男は、大木に登りやり過ごすことにした。
するとなんとオオカミ達が組体操のピラミッドよろしく、梯子のように組み始めたではないか。
しかし悲しいことに僅かに男の元へは高さが足りず、男は一安心。しかしここからが本番だった。
「オルテガ、マッシュ、小池婆を呼ぶぞ」
※元ネタが解らない方は己の生まれの不幸を呪うがいい。
そこへ現れたのは一匹の老猫。猫はひょいと狼たちのテッペンに飛び乗った。
しかしその様子を見ていた男は合体シーンを静かに眺める程優しくはない。
ズバっと容赦なく猫を斬り捨てる男。その瞬間、周囲には謎の金属音が鳴り響き、オオカミと猫は崩れ落ちた。
――翌朝、男が恐る恐る大木から降りると、そこには茶釜の蓋が落ちていた。どっかで見たな……と思った男だが、とりあえず主に報告すべく屋敷へ向かった。
すると屋敷は何やら騒がしい。
どうやら主の母がトイレですっころんで大けがをしたらしい。加えて家の大事な茶釜の蓋が無くなり、それも皆で探し回っているとのことだった。
何か関係があるのでは? と思った男はいきさつを主に報告し、主は母を怪しんで寝室へと赴いた。
すると母は妙なうめき声を上げて布団に篭っている。
「すわ、化け猫ぞ!」
と男は主の母を布団の上から突き刺した。
男が布団を開けてみると、そこには一匹の老いた猫の死骸があるのみだった。
――というお話。
オオカミの特性を現した説話だと言われているが、にしても梯子状に組むオオカミに繋がるのかどうかが僕は疑問である。
梯子状に肩車する妖怪としては、石燕が描いた鼬(てん)もいる。
動物が高く組み上がる――という表現には、きっと何かもっと意味があるのだろう。面白い。