耐えろ僕らの大国主!
日本神話と妖怪特集その8
試練の大国主
間が空いてしまいましたが、日本神話の大国主の過酷なお話をもって久々に再開したいと思います。
前回は因幡の白兎編でしたが、
その時にも出てきた沢山の兄弟神、八十神はとにかくオオナムヂ(大国主のこと。オオクニヌシという呼び名になるまで様々な名前を持つのでややこしいです)が憎くてなりません。
のみならず、前回の白兎編でヤガミヒメを八十神を差し置いてゲットしてしまったオオナムヂですので、八十神達はもう絶対に許しません。
なんとオオナムジは、二度も八十神の手によって殺されてしまいます。
一度目は石の火で焼き殺されたところ母親が高天原に助けを求めザオリク。
二度目は、大木に挟まれて殺されたところをまた母ちゃんが探し出してザオリクをかけ、
「あんたね、このままだと滅ぼされてしまうよ! 根の堅州国にいるスサノオさんのところへ逃げなさい!」
二回も殺されてますが……とかいうツッコミはいいとして、オオナムヂは言いつけの通りスサノオの元へと向かいます。
――さてちょっと脱線しまして、そういやぁスサノオは何やってたっけ? と忘れた方の為に補足しますが、アマテラス姉さんと喧嘩して追放され、地上でヤマタノオロチをぶっ倒してクシナダヒメと結婚して出雲にいらっしゃるんですね。のほほんです。
では話を戻して――
そこへふらりとやって来たのはオオナムヂ。
スサノオにはスセリビメという娘ができていたのですが、なんと玄関先でばったり会ったオオナムヂとスセリビメは一目惚れしてしまいます。
「お父さん、なんだかとても綺麗で素敵な男性がいらしましたわよ♡」
娘の一言で全てを察したスサノオは、悪態をつきます。
「はぁ? 何を言ってる、ただの醜い野郎じゃないか。あんなもの、アシハラシコヲ(葦原の醜い男、という意味)とでも呼べばいい。そうだな、蛇の部屋にでも泊めてやれ」
ここから始まるスサノオの試練。
試練その一は、蛇のお部屋で一泊。
これは、スセリビメが渡してくれた首に巻く用途の薄い布を使い蛇を鎮め、乗り越えます。
次に、ムカデと蜂の沢山いる部屋で一泊。
これも、同じようにスセリビメの助けで乗り越えます。
その次は、平原に出て、スサノオの放った鳴鏑(鏑矢のこと。つまり矢)を拾って来い、と命じられます。
「あれ? これは楽ちんじゃね?」
と思いきや、スサノオはオオナムジが平原に入った途端に火を放ちます。
瞬く間に火に囲まれ、絶体絶命!
「大丈夫、私はきっと生きて乗り越えてみせる! I'll be back」
と言ったかは知りませんがそんな最悪の状況。
――とその時、ゲームのお助けユルカワアニマルよろしく一匹の鼠が出てきて、「内はホラホラ、外はスブスブ」と言います。
「そうか!」
何がそうか! なのかわかりませんが、オオナムジは足元の地面を力強く踏みました。すると地面が抜けて空洞ができ、そこに隠れて火をやり過ごすことができました。しかも、鼠は鏑矢を咥えて持ってきてくれます。チートだろ。
最後の試練。
スサノオは、自分の頭のシラミを取るように命じます。
すると、それはシラミではなくムカデ。
そこでもスセリビメは大活躍。っていうかずっとスセリビメ「が」大活躍。
椋の実と赤土をオオナムヂに渡し、それを噛みくだくことであたかもムカデを噛みくだいているかのように見せたのです。
「ふふ、やりおるアシハラシコヲ」
スサノオはそのまま眠ってしまいます。
これは好機! と、オオナムヂはスサノオの髪を柱に結いつけ、スサノオの刀と矢を奪い、スセリビメとスセリビメの琴を背負って逃げ出そうとします。
しかし、その時琴をぶつけてしまい、音が鳴り響きます。
目を覚ますスサノオ! なんだこの展開映画みたいだ! 神話で既にやってたんだからすごいものです。
が、柱にスサノオの髪を結んでおいたせいで時間稼ぎができ、なんとか逃げ出します。
しかしもちろん追いかけてくるスサノオ。
と、スサノオが突然立ち止まり、叫びました。
「良く聞けシコヲ! お前が今持っている刀と弓で、八十神達を降伏させろ! そしてお前は大国主となり、また宇都志国玉神(ウツシクニタマ)となりスセリビメと結婚して立派な宮殿を建てろ! このやろうめチクショー!(実際に古事記上でも、こやつめ! とスサノオは捨てセリフ吐きます。かっこいい)」
その後――
言われた通りに大国主となったオオナムヂは、八十神達を降伏させ、スセリビメを妻として立派な宮殿を建てて国造りを始めるのです。
めでたしめでた――いやちょっと待った!
触れずにここまで来ましたが、因幡の白兎編でオオナムヂはヤガミヒメと結ばれたはず。それがスサノオ家で簡単に一目惚れした挙句駆け落ちみたいなことしちゃって、ヤガミヒメさん流石にツラくないか? とずっと思っていたのです。
しかし神話は権力の世界。
しっかりとヤガミヒメに関する記述もあります。
それによると、ヤガミヒメはスセリビメからの嫉妬を恐れ、オオナムヂとの間にでき子供を木の俣に刺し挟んで逃げるように因幡へと帰っていってしまったのだそうです。
なんだかやりきれない。。。
――そんな感じの試練の神話、いかがだったでしょう?
これは、新参を立派な「一員」とする為の過酷な試練の描写であるとか色々説があります。また、娘をくれてやるものか、な父親とのドタバタ劇も今に通ずるものが沢山ありますね。最後のスサノオのツンデレっぷりが最高です。
かくしてスサノオにも認められ、スサノオの娘という最高の相手もゲットした大国主は、国造りを始めることになります。
このような試練を乗り越えてきた大国主だからこそ、国を造ることを任せられるというものです。
というわけで、次は国造りとか国譲りとかをお送りします!
妖怪の名前がついに出て来なくなったぞ笑