なんでもありかよ! 馬の足(うまのあし)
馬の足
歌川広重画『名所江戸百景』より
なんとも分かり易い名前であるが、馬の足は福岡や山口に伝わるちゃんとした妖怪である。
何を隠そう、馬の足が木の枝からダラリと垂れているという妖怪で、馬の足なのだから他に呼びようもなかったのだろう。
さがりにしろ馬の足にしろ、馬は木から垂れるのがお好きらしい。やはり地上ばかりを走らされるので化けて出るなら木の上がいいーーということかも知れない。
もはや何でもありじゃねぇか! と思った方。今更何を言う。妖怪はなんでもありなのだ。
何でもありだが、ちゃんと民意を得て妖怪として伝わっているわけで、ブタの足でも牛の足でもなく妖怪「馬の足」はそれなりに紆余曲折を経て今に至るのである。たぶん。
で――なんだよただの馬の足か、と思うなかれ。馬の脚力は何しろあれだけのスピードで走れるわけで、とにかく強い。お腹でも蹴られようものなら下手すりゃ内蔵破裂で死んでしまうほど。
それが木から垂れているのだから、イタズラ妖怪と笑うには危険すぎる。
正体はタヌキが化けたものとも言われるが、なかなかユニークなものに化けるタヌキもいたものである。