妖怪の正しい使い方
妖怪の使い方
ようかいの、つかいかたぁ?
――なんて教育テレビで博士の無茶ブリに思わず質問を質問で返しちゃう女の子のような声が聞こえてきそうですが、正しく使えば正しく作用する、妖怪の使い方について触れてみたいと思います。
よく、妖怪は「装置である」という言われ方をします。文化的、民俗的、日本的な説明装置。
難しいことを取っ払って簡単に言うならば、民間伝承においては「理解できないことや不可解な現象を全て妖怪に押し付けてきた」ということであり、妖怪はそうしてワケワカメちゃんな物事を身代わりとなって解決する「装置」だったわけです。
※もちろん、あらゆる妖怪がそうであったわけではありません。
人間、どうしても自分の理解できない現象には何らかの「答え」を欲するものです。
昔っから、それを解決するのが妖怪だったのです。
そして、我が国はそのように多くの物事を妖怪のせいにすることで前に進む活力を得てきたのです。
例として、地震。
かつて大地震で多くの人々が亡くなった際、天災ばかりはどうしようもないにも関わらず、怒りや悲しみの矛先として、人々は妖怪を利用しました。
江戸時代、地震を起こすろされた妖怪としての「鯰(なまず)」がいます。
絵師達はこぞって鯰絵を描き、また鯰を退治する絵を描きました。
現代ですら確実に防ぐことなどできない地震を、妖怪のせいにしてしまうことでひとまず「解決」し、発散させていたのです。
――と、いうことを踏まえると、実に多くの「妖怪への謎」が解決したりもします。
・多くの地域で似たような特性の妖怪が、異なる名前で伝わっていること。
↑これは、名前なんてどうでもいいからです。必要なのはある現象の正体とされる説得力のある名前で、説得力さえあればどんな名前だっていいわけです。故に名前にその地域の特徴が見て取れたりするんですね。民俗学的です。
・日本の妖怪が、海外のモンスターズに比べてどこか劣ること。
↑身近での不可解な現象の正体として産まれた妖怪が、超絶破壊的攻撃力とか持ってなくていいんです。持ってたら退治できません。退治(解決)できることが前提であるべきなのが妖怪なのです。
・なんかキモくてダサイこと。
かっこよすぎたり、可愛すぎる必要性がゼロだからです。なんかキモイ。なんかダサイぐらいが丁度良いのが妖怪なのです。
――そして、言っていいのかダメなのか、妖怪の衝撃事実。
妖怪は、恐いものを無くす為の、恐くないヤツだということ。
だってそうでしょう。解らない現象を解らないままにしておく方が恐いでしょう。それを「それは妖怪〇〇〇の仕業だ」と言えば、恐さも薄れ、なんかバカバカしくなり、「なぁんだ妖怪か」で解決するわけです。
その妖怪が実際にいるのかいないのか、という問題ではなく、そうして妖怪に擦り付ける事であらゆる恐怖を、謎を、ちょっとしたユーモアのスパイスを振りかけて解決させちゃうのです。
そういう、装置なのです。
さて。では科学で化学が駆逐され、妖怪より人間の方が恐い現代で、一体妖怪をどう使えば良いのか?
昔ほど巧く使えないでしょうが、それでもやっぱりちょっと理解しにくい事が起きた際は、積極的に妖怪のせいにしちゃって良いと思うのです。そうやって使えば良いと思うのです。
装置の作用は昔とは違うでしょう。
それでも、何か悲しいことがあって落ち込んでいる友人に、恋人に、
「それは妖怪だよ。〇〇〇ってやつがいてね、そいつはカクカクシカジカこういうヤツなんだ」
と真顔で言ってあげれば、少しは悲しい気分もほぐれるのではないでしょうか。
ふざけないで! と相手が怒りだしたのなら、「怒っちゃ野暮だぜ」と軽くあしらうか、身内妖怪談義でも始めると良いかと思います。
で、現代で妖怪を使う際、武器となるのは「妖怪の知識」ですね。当たり前です。
友人が恋人と喧嘩して泣いていたのなら――
「道成寺の鐘、っていうおぞましい執念を持った女の妖怪がいてね。これは蛇になったり火を吹いたりするんだけど、君も恋人を強く思うのなら、そのぐらいできなくちゃならない。蛇にもなれないし火も吹けないだろう? 愛が足りないよ。そんなんで泣いてちゃ祟られる」
と励ます。
いわくつき物件を掴んでしまい夜な夜な怪異に悩まされる友人がいたら――
「家鳴りに小豆はかりに枕返し! いいなぁ、妖怪ファンなら倍の金額出してでも住みたがるよ?」
と逆に羨ましがってみる。
忙しい日々に疲れていたら――
「妖怪いそがしは水木しげるも驚く程に日本人にはよく憑いているらしい。成程自分もか……。今度お祓いしに行こ。あ、でもそんな余裕無いか。あぁ忙しい」
と自らに憑く妖怪を考え直してみる。
このように、様々なシチュエーションの、様々な妖怪を知っておくことで、説得力が増します。のみならず現在言われるところの「妖怪」はおしなべて「昔から伝わる(であろう)もの」ですから、効果抜群です。
そのためには――妖怪うぃき的妖怪図鑑、よろしくね!
となりますね。もちろん。