妖怪うぃき的妖怪図鑑

妖怪うぃきから産まれた妖怪図鑑ブログ。妖怪の原点に触れ、もっと魑魅魍魎を知るきっかけになれば幸いです。

江戸時代のUFO的怪異「虚舟」(うつろぶね)

虚舟
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江戸時代にも未確認非飛行物体が日本を騒がせた事があることをご存知だろうか?
その形状はまさにUFO。丸みを帯びていて、直径が6メートルほど。上手にはガラス張りの障子に底は鉄の板金。

『兎園小説』によると、
ーーそれは1803年に常陸国(現茨城県の辺り)の浜に現れたのだという。
漁師達が舟で漕ぎ着け中を見てみると、異様な風体の婦人が座っていた。
赤い髪に、桃色の顔、そして怪しい四角形の箱を大事そうに抱えている。その箱だけはどうしても大切なようで、箱にだけは人を近づけようとしない。
漁師達はその舟を検分したが、婦人はその様子をにこやかに見て微笑むばかり。
それを見た古老が、
「この女はきっと蛮族の王の娘に違いない。一旦嫁いだのだが密夫と恋に落ち、それが王にバレ、密夫は殺された。しかし流石に王の娘も処刑するわけにはいかないから、このような船に乗せ、生死を天に任せたのだろう。おそらく箱の中身は密夫の生首だ。だから愛おしんで決して離そうとしないのだ」と言った。
(探偵ばりの推測力である)

こいつは厄介な事になった、と漁師達は話し合いを重ね、最終的には元の通り婦人を舟に乗せて、海に押し返すことにした(!!)。漁師達がもう少し人道的に対処できていれば、このような仕打ちは避けられたのであろう。しかしそれは蛮女の不幸とするほかない。

ーーという話である。
絵のインパクトと名前だけだと、なんとも妖怪的な臭いがしていたが、話を紐解くと蛮女の不幸になんとも言えない気分になる。
それに「蛮族の王の娘」というのも単なる推測に過ぎず、もっと別の目的があって漂着したかも知れないのだ。
婦人の持っていた四角い箱の中身も、本当はもっと違うスゴイものだったかも……。