藤原の効果と聞いたので『月百姿』より「住吉の名月 定家」
『月百姿』より「住吉の名月 定家」
台風27号と28号のダブルアタックにより、世間は何やら聞き慣れぬ「藤原の効果」とやらが飛び交っている。
要は藤原の効果というのは、二つの台風が接近することにより、予測できない動きをする現象のことで、これを提唱した人物が藤原咲平という人だったから。
ーーそんな恐ろしい台風の怪異にざわめく今宵は、『月百姿』の藤原定家(ふじわらのさだいえ)の夢中での出来事を描いた「住吉の名月」を紹介したい。
この絵は、住吉神社で居眠りをしていた定家の元に、住吉明神が人の体を成して現れ、定家の悩んでいた美や歌への迷いを晴らしたーーというもの。
藤原定家の名をどこかで聞いたような気がーーと思ったあなた。
そう、藤原定家といえば、あの「小倉百人一首」の歌を勅撰した人物である。
定家自身も公家であり、更には歌人であり、多くの歌を残している。
そこで最後に、台風だコロッケだと騒ぐのを止めて、百人一首を選ぶ程の歌い手であった美しき藤原定家の歌を読んで、心安らかに、また妖怪などに憑かれた身体から月物(憑きモノ)を落としていってほしい。
夜もすがら月にうれへてねをぞ泣く命にむかふ物思ふとて
(大体の意味)一晩中月に訴え、声をあげて泣いている。例えそれが自分の命にすらも逆らう想いであるからとしても。
むせぶとも知らじな心かはら屋に我のみ消たぬ下の煙は
私がいくらむせび泣いたってあの人は知らないンだろう。瓦屋に立ち昇る煙のように、ただ私だけが恋する想いを消さずにいることなんて。
忘るなよ宿るたもとはかはるともかたみにしぼる夜はの月影
忘れないでおくれよ。月の光が照らす袂が変わってしまったとしても、共に過ごし、共に絞った月の光のことは。
明けばまた秋のなかばも過ぎぬべしかたぶく月の惜しきのみかは
明日になれば秋ももう半ばを過ぎてしまう。沈みかけの月が惜しいのかな。いやいや、残った僅かな秋もまた惜しいのだ。
こしかたはみな面影にうかびきぬ行末てらせ秋の夜の月
月を見ると、今までの道のりが目に浮かぶようだ。これから私が進む道も、どうか照らしておくれ、秋の夜の月よ。
色々と探してピックアップしているだけでもなんだか心が洗われたような気がする。
流石藤原定家。
これぞ、藤原の(定家)効果也や。