秋が来た感があるので『月百姿』より「読書の月 子路」
『月百姿』より「読書の月 子路」
寒い。
妖怪へぇこいたの弱点は冷気である。しかしこの寒さもまた、夏をや春を待ち焦がれるのに必要な要素なのだから困る。
秋と言えば読書。いや、最早何だって「――の秋」としてしまって良いような風潮があるのでなんだか複雑だが、この後の展開に支障をきたすのでそこは置いといて。
読書の秋である。
今日紹介する月モノは、孔子の弟子である子路(しろ)が歩きながら月明かりで読書をする、というなんとも素敵な一枚。
超有名な思想家である孔子だが、その弟子については踏み込んで勉強した者以外はそんなに知らないのではないだろうか。
この子路は、唯一孔子に言いたい事を言える弟子として知られている。
元はただの荒くれ者だった子路は、ある日孔子という怪しい人物の名を聞き、ふざけんなエセ思想家め! と単身孔子の家へ突撃する。
しかしそこで孔子の神々しさに触れ、さらには学がいかに重要であるかを説かれ、弟子となることを決意した。
子路はかなり素直でいいやつなのである。
孔子を心底敬愛し、かつ文句も言えることから、弟子というよりは親友に近い存在だったのではないか? という説もある。
事実、色々あって諸国を放浪した孔子に最も長く傍に居続けたのはこの子路だと言われている。
――この芳年が描いた絵が、どの逸話を元にしているのかはどうにも解らなかったのだが、孔子に言われた通り、武力ではなく学を重んじて読書に励んでいる子路の姿なのだと想像すると心が温かくなる。
でも現代でこれやったら、スマホいじりながら歩くのが問題になるぐらいだから、きっと批判されるのだろう。
そもそも月明かりだけで読書ができるほど、月の光が届く場所が少ないのが何より悲しい。