累ちゃんと和尚さん
『北斎漫画』より
こちらの絵は累ヶ淵物語での祐天和尚と累(かさね)の怨霊との対決シーンを描いたもの。
その物語で、累の怨霊を解脱させるのに成功するのが祐天和尚である(『絵本百物語』の累紹介では登場しなかったが、有名人である)。
累と書いてかさねと読む理由も『絵本百物語』の解説には詳しく書かれていなかったので説明すると――
与右衛門という男がおり、お杉という名の女性と結婚した。
お杉はバツイチであり、助という名の女の子の連れ子がいた。
しかし助は顔が生まれつき醜かったようで、それを嫌がった与右衛門は助を殺してしまう。
その後お杉とピー……じゃなくてお杉と与右衛門の間に女の子が出来、名前を累(るい)と名付けた。
しかしこの累、恐ろしいほどに殺した筈の助に生き写しで、まるで重ねて産まれて来たのではないかと思われるほどだった。
そんなわけで累は町の人々らから累(かさね)と呼ばれるようになってしまった。
――そんな感じである。
そして不幸なあだ名を持って生まれた累は、その後に様々な祟りをなし、両親も死に、哀しいかな累自身も結婚した相手に殺されてしまう。
累はその後も、自分を殺した夫が、違う女と作った子供に乗り移り、激しく罵ったりする。
「やべぇこれやべぇよ助けて和尚さん!」
――というわけで呼ばれたのがこの祐天和尚。
祐天和尚は実在した人物で、有名な呪術師だったらしい。
そして祐天和尚の念仏で晴れて累も成仏、というわけである。
ところで、今ふと既視感のようなものを感じたのだが、理由が解った。
似たような「女性の恨みがもたらす怪異」に関する妖怪が多いせいだと思う。
そう考えると男性のこういう類の話を聞かない。
なるほど、昔っから「本当に怒らせたらヤバイのは女性」と相場は決まってたんだな――なんて重ね重ね思った。