清玄の霊桜姫を慕ふの図
『新形三十六怪撰』より「清玄の霊桜姫を慕ふの図」
なんのことはない、清玄の霊が桜姫に未練たらたらでシミみたいに出てきてしまった図である。
ーーなんて書いても元ネタを知らなければサッパリなので、頑張って書く。
まず、この絵は有名な歌舞伎の演目である「清玄桜姫」に依るものだと思われる。
最もヒットした有名なのでは「桜姫東文章」という、様々な演目のいいところを混ぜたものがあるが、多分芳年が描いたのは元ネタの「清玄桜姫」から。
僕も歌舞伎だ謡曲だなんていうのはサッパリだが、あらすじをざっと書いておく。
京都は清水寺に清玄という僧がいた。
ある日清玄は、参拝に来ていた姫、桜姫を見て一目惚れしてしまう。
清「か、かわいい! 好きだ! 頼む! 毎朝味噌汁作って下さい!」
↓
桜「は? え? うん、無理です」
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清「お願いだ! この通り! 運命感じちゃったんです!」
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清水寺の僧達「おいお前なにやってんの? そういうのダメだから」
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清「うっさいくそ坊主! 俺は桜姫たんに惚れたんでぃ!」
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清水寺の僧達「よし、じゃあクビ」←今のとこココ
かくして清水の舞台から飛び降ろされた清玄は、庵にて細細と暮らす羽目に。
しかし運命は残酷なもので、ある日たまたま桜姫が清玄の庵を訪ねて来てしまう。
清「うはっ!? 桜姫たん!! ここで逢ったが百年と一日前から愛してる!!」
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桜「ゲ。なんかあなた見覚えあるけどキモいからお前達やっておしまい!」
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ヤッコ「ぐへへへ。惚れた相手が悪かったみたいだなぁ。しねぇ!」
↓
清「ぐぼぁ。。。」
そうして桜姫の下僕に殺されてしまった清玄。
しかし清玄の一目惚れパワーは凄まじく、死んでも尚亡霊となって桜姫の元へ現れた。
キモストーカーの末路がまさにこの絵↑なのである。
因みに、歌舞伎では「清玄桜姫」はすぐに上演されなくなり、様々な演目と混ざり合ってなんとかまた日の目を見た。
それはなぜかと言えば、別に清玄の祟りとかそういうオカルトな話ではなく、単純に「話のボリュームなさ過ぎて一日かける上演には足りなかったから」らしい。
清玄頑張れ! 今度は襖のシミじゃなく堂々と出て来い!
芳年があえて錯覚として描いたーーなんていうマジな話は置いといて、です。