仁田忠常洞中に奇異を見る図
『新形三十六怪撰』より「仁田忠常洞中に奇異を見る図」
これが藤岡弘探検隊の始まりである!
――なんて冗談はさておき、この絵は仁田忠常が源頼家に命じられて富士山噴火によってできた溶岩窟である「人穴(ひとあな)」を探検をした際の絵である。
源頼家は源頼朝の子であるが、『吾妻鑑』等には家来の妾を寝とったりするヤツと書かれていたりする。しかし前向きに捉えれば「好奇心旺盛」ということに……ならない。
そんな好奇心旺盛な頼家は、この仁田さんに富士の人穴を探検させる以前にも、伊豆にて和田胤長 (わだたねなが)さんに洞窟探検をさせている。
しかし人穴は甘いモンではなく、家来を連れて探索に向かった仁田さんだが、家来は皆死んでしまったという。
仁田さんの証言によれば、中では様々な怪異が起き、光の中から人のような影が出てきたり、鬨の声が聞こえたり、大蛇がいたりしたそう。
その報告を聞いたある人物が、
「人穴は浅間大菩薩の御在所であるのになんちゅうことをしたんだ。祟られるでぇ!」
と言ったらしい。
それが事実だったのかどうかは解らないが、頼家は翌年に入浴中を襲撃され暗殺されており、また仁田さんも人穴探検の数か月後に北条氏により誅殺されている。
人穴こえぇ……。
余談だが、この仁田忠常さんは、無垢行縢という石燕の妖怪で紹介した、曾我兄弟の仇討物語において曾我兄弟の兄にトドメを刺した人物でもある。
また、関係無い話だが、富士山の風穴(ふうけつ)を知っていた為、僕は何度も「じんけつ」というワードで検索していた。だが読みは人穴(ひとあな)。道理で引っかからなかったわけだ。……でもなぜだ!