瓶長(かめおさ)
『百器徒然袋』より「瓶長」
瓶長は、水瓶が付喪神化して妖怪となったもの。
しかしこの瓶長、『百器徒然袋』の宝船を除いた最後の妖怪であり、それは同時に『画図百鬼夜行』シリーズの最後を飾ることも意味する。
そういった意味でなのか、なかなか調べると面白い妖怪となっている。
まずは石燕の解説文を見てみよう。
「わざわひは吉事のふくするところと言へば、酌どもつきず、飲めどもかはらぬめでたきことをかねて知らする瓶長にやと、夢のうちにおもひぬ」
災い=妖怪として読み解くと、まるで妖怪を描き続けてきた自分への最後の「おつかれした!」的文章に読めない事も無い。
「酌どもつきず、飲めどもかはらぬめでたきことをかねて知らする瓶長にやと――」というくだりなんかは、なんだかここまで描き切ったのが信じられないけど、夢じゃないんだ! という喜びが隠れている気すらする。
まぁ最後は「夢のうちにおもひぬ」なわけだが。
また、鳥山石燕に浮世絵を習い、後に黄表紙等で一世を風靡した「恋川春町」という絵師がおり、その絵師は雅号を亀長と言ったらしい。
恋川春町は大の酒好きであり、よくへべれけに酔っぱらっていたとか。
老いた石燕は、妖怪画の最後に、愛弟子にこれからを託す意味も込め、ユーモアたっぷりに妖怪「瓶長」を描いたのではなかろうか?
そうこう考えながらこの妖怪を眺めていると、なんだか心が温かくなる。
石燕先生、お疲れ様でした!