面霊気(めんれいき)
『百器徒然袋』より「面霊気」
それにしてもダルそうな表情のお面である。
面霊気は、仮面に宿った付喪神の妖怪である。
石燕の解説文は――
「聖徳太子の時、秦の川勝あまたの仮面を製しよし。かく生けるがごとくなるは、川勝のたくめる仮面にやあらんと、夢心におもひぬ」
となっており、聖徳太子の右腕的存在であった秦河勝(はたのかわかつ)が作成した面に魂が宿ったもの、と書かれている。
人形にしろお面にしろ、「顔」のあるモノには古来より魂が宿るとされてきた。それが聖徳太子と所縁ある人物の作ったものであればなおさらだろう。
秦河勝という人物は、ルーツを秦の始皇帝とする秦氏の族長的権力者であり、秦氏所縁の地として京都や大阪の太秦という地名の由来にもなっている。
また、凄く余談ではあるが、ぷえぇぇぇぇぇぇぇ、の雅楽で有名な東儀秀樹の東儀家は、この秦河勝の末裔であるらしいが、真偽は不明。
またまた余談だが、僕の父ちゃんは東儀秀樹と同級生だったらしい。
面は、職人が作ったしっかりしたものであればあるほど、手に取りじっと眺めていると吸い込まれそうな錯覚に陥ることがある。
面に魂が宿るというのは、妖怪なんかこれっぽっちも見えやしない僕のような人間でも、有りえない話では無いな、なんて思う力がある――なんて偉そうに夢心地におもひぬ。