提灯小僧(ちょうちんこぞう)
『狂歌百物語』より「提灯小僧」
小雨の降る夜。
薄暗い道を歩いていると、ふいに後ろから提灯を持った子供に追い抜かれた。
子供は追い抜いた後、突然立ち止まり、こちらを振り返る。
不審に思いつつ子供を追い抜くと、またすぐに子供が追い抜いてくる。
これをずっと繰り返すのだ。
ただ、その後何かが起こるわけでもない。
ーー提灯小僧とは、今書いたようにじつに無害な妖怪である。
一説には「かつてその場で殺された子供の怨念」というものがあり、だから子供は何をするでもなく、また何をすればいいのかもわからず、そこを通る人々をからかうのかもしれない。
小僧妖怪はおしなべて江戸時代では人気者だった。
さらに提灯もしばし妖怪として描かれる。
そんな二つの組み合わせなのだから、有名にならないわけがない。
狸かそれとも狐か。
はたまた人間の怨念か。
特に何をするでもないのに皆に愛されてきた提灯小僧は、今日もどこかで人を追い抜く。
というかもしかしたら、人々に歩くべき道を提灯で照らして示してくれているのかもしれない。
そうだとしたら無害どころかイイヤツである。
あぁ可愛い提灯小僧。