妖怪うぃき的妖怪図鑑

妖怪うぃきから産まれた妖怪図鑑ブログ。妖怪の原点に触れ、もっと魑魅魍魎を知るきっかけになれば幸いです。

キジムナーとケンムンはヒザマずく

キジムナー(きじむなー)

沖縄県の妖怪筆頭と言えば、このキジムナーだろう。どういうわけかマイナーな妖怪のようでいて、鬼太郎茶屋でキジムナー関係の商品が多い事とか境港の駅で使われてたりとか水木プロは前面に推し出したい妖怪なのかも知れない。

確かにコワキモカワキャラとしての可能性は十分感じる。

 

で、このキジムナーは、主にガジュマルの古木の精霊とされている。

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このキジムナー、沖縄版河童と称されるだけあって、口碑伝承も実に多肢に渡り、

「髪、顔、身体が赤く、子供のような体型だが」だとか「実は木そのもの」だとか、「人間と共存」しているとか「怨みを買うとすごい祟りに遭う」、「相撲が大好き」などなど、実に実体の見えてこない複雑な根を持つ妖怪でもある。

好物は魚の目玉、特に左目がお好きなようで、漁をして片目の魚が揚がるとキジムナーがいたことが解るのだという。

しかしタコやニワトリが苦手で、それらを使って脅せば撃退できるのだとか。

また、火をよく使うとも言われ、キジムナーが家の屋根に火を灯すことは死の予兆ともされていたようだ。

 

ケンムン(けんむん。ケンモン、とも)

さて。

ここで少しだけ目を反らして、鹿児島県奄美大島に伝わるケンムンという妖怪も紹介しておく。

これはキジムナーとほぼ同じ特性、外観を持った妖怪で、間違いなく繋がりのある妖怪である。

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『南島雑話』より

 

名越左源太という人物が奄美大島の様々な文化、風習を書き留めた『南島雑話』という謎多き書があり、それにケンムンは猿のような河童のようなモノとして描かれている。

ケンムンはキジムナーの特性に加え、変化能力も持っており、人や動物に化けるだけでなく植物などにも化けられるらしい。こうなるとタヌキ的にもなってくる。

苦手なものはタコとギブ貝で、それを「ぶん投げるぞオラ!」と言うと逃げて行く。

また他には、金物が大嫌いなのだという。アレルギーだろうか。

 

で、気になるのは、ケンムンの起源説の一つに、大工の神が作った藁人形が海や河に捨てられてケンムンとなった――というものがあること。

これは河童の起源の一つと一致するし、それは使役されていた集団が妖怪視されるようになったことに繋がる。

さらに渡来人の多くが九州地方にやってきて、帰ることも出来ずに帰化してしまうような事が多かった――という話もあったりするので、ケンムンやキジムナーは何らかの理由でやってきて帰れなくなった職人集団、渡来人だった可能性もある。

赤い髪、体、顔。

しつこくその辺りを調べてみると、どうやら六世紀頃の「遣唐使」は、奄美大島を唐への中継地点として利用していたことがあるらしい。

とすると、離島と本土と大陸とが繋がる。

 

ここでちょっと思ったのだが――

そもそも奄美諸島や沖縄というのは永く異国のようなものであった。

となると、渡来人云々の前に、元からいた人々が本土の人間達にとっては妖怪のように見えた――という可能性の方が高いのではないだろうか。

画像を貼った『南島雑話』も幕末頃の書であるし、遣唐使云々の時代とは千年近い開きがある。

 

ヒザマ(ひざま)

まさかの三妖怪目を出すが、奄美諸島南部、沖永良部島(おきのえらぶじま)にはヒザマという妖怪がいる。

これはニワトリのような魔鳥だと言われ、胡麻塩色の羽を持ち頬は赤く、家に憑いて火事を起こすのだと言う。

そして、沖永良部島では最も恐ろしい邪神として忌み嫌われており、そのせいかニワトリを飼う事も避けられていたらしい。

ニワトリを嫌う……。

そう、キジムナーはニワトリが苦手である。

それはまさに、キジムナーが古くからその地にいた人々の事を指している証拠にはならないだろうか?

(沖縄と奄美諸島とは言わずもがな文化風習の似通っている地域が多くあり、特に沖永良部島は沖縄本土と凄く近い風習らしい)

 

――キジムナーとケンムンに纏わる話は膨大で、とんでもない話に繋がっていったりもする。

例えばケンムン除けの作法で、藁人形をガジュマルの木に釘で打ちつける、というものがある。

起源説にもある藁人形の化身とされるケンムン。

これは素直に丑の刻参り橋姫と繋がる。

それらは河童起源説の一つである陰陽師の式神が河童説とも繋がるし、となるとやっぱり河童と繋がってくる。

もしかしたらキジムナーとかケンムンが河童の元祖なんじゃねぇか? とも思えてくるし、「やべぇ軽い気持ちで調べ始めたらこいつらすげぇ厄介だぞ」とここに来てようやく気付くわけである。

 

ちなみに、キジムナーとケンムンが共通して嫌いなのはタコである。

どうやら過去にタコにいじめられたことがあるかららしいが、超深読みしてタコもまた何らかの性質を持った人種だとすると――。更に金物嫌いが製鉄業と敵対関係にあった何らかの氏族の事を示してるんじゃねぇかとか勘繰ったりすると――。

 

混乱も極まってきたのでとりあえずタコで脅して逃げることにする。

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これ以上ややこしくしやがったら投げるぞおら! 投げちゃうぞ!