妖怪うぃき的妖怪図鑑

妖怪うぃきから産まれた妖怪図鑑ブログ。妖怪の原点に触れ、もっと魑魅魍魎を知るきっかけになれば幸いです。

大坊主(おおぼうず)

大坊主

坊主の種類は数あれど、のっぺらぼうのようなおどかし方をしてくる変わった妖怪がこの大坊主である。
 
昔因幡の国(鳥取)にある武士がいて、宿泊先の宿にて「この辺りには大坊主っちゅうバケモンが出る」という話を耳にした。
んじゃあちょっくら退治してやらぁ!
ということで武士は夜中に大坊主が出ると言われる山へ一人踏み込んで行った。
途中、小さな茶屋があったので、そこの主人にも「俺が大坊主を退治してやるから待ってろ」と武士は自慢げに行った。
来る退治の時刻。
何も見えないほどの暗闇の中、武士は森をゆっくりと進んでいく。すると、噂通り巨大な気配を感じ、すぐに大坊主はあらわれた。
しかしそこは豪胆な武士。
「こんにゃろう!!」
と一喝すると、大坊主は驚いて逃げていってしまった。
なんだ大したことないーーと意気揚々と道を戻り、武士は茶屋の主人に報告した。
「大したことなかったぞ」
「あれ。流石おサムライさんだぁ。大坊主ってのはどんな大きさで?」
「ちょっと人より大きいぐらいなもんたったわ」
「あれれ。おかしいなぁ、もっと大きいと聞いてたんですがねーーすると、こんぐらいですかね?」
「え?」
武士が主人を見ると、なんと主人は物凄い大きさとなり、さらには武士の見た大坊主よりも遥かに恐ろしい姿で武士を睨みつけていた。
これには武士もたまらず、気を失ってその場に倒れてしまった。
武士が目を覚ますと、そこには宿などなく、ただ広い野原が広がっているだけだったのだという。
 
 
主人もまた大坊主ーーという古典的ながら貉ののっぺらぼうに似た逸話。
入道にしろ坊主にしろ、なぜだか頭頂部が薄い輩は自分をデカく見せたいらしい。
髪が伸びる妄想から生まれたんじゃなかろうな?
それとも仏門に下った者がそうなのだろうか?
とにかく何故かこの手の背が伸びる妖怪は坊主か入道と決まっていて、一説には一時期大いに乱れた僧への悪感情が、僧を妖怪そのものに仕立て上げたのだとか。
僧=悪、という、仏教界の黒歴史が垣間見える妖怪がこういった類の妖怪なのである。