サクラの原点? 泣き婆
泣き婆(なきばばあ)
『蕪村妖怪絵巻』より「遠州見つけの宿 夜泣きばばあ」
静岡県は見附の宿に出たと云う泣き婆は、勝手に人の家の前で泣きわめく妖怪である。(泣き婆は水木御大の命名で、上記の『蕪村妖怪絵巻』では夜泣きばばあとなっている)
泣き婆に泣かれた家には必ず不幸があるのだと云うが……うえの画像の夜泣きばばあは泣いているというようりは笑っているように見えるのは気のせいか。
他にも、多数の地域で葬式に泣き婆がよく出たらしい。
これは誰の親族かもわからないのだが、とにかく大声をあげて泣き、全身で悲しみを現す。故に泣き婆に釣られて泣きだしてしまう者も大勢いたようで、これなんかは現代のサクラとも通ずるものがある気がする。
それこそテレビ番組で大げさに声をあげて笑うスタッフなんかは「笑い爺」じゃないか。
更に興味深いのが、葬式に現れたとされる泣き婆は、喪主から謝礼として米なんかを貰っていたらしい。
こうなると妖怪でもなんでもなくて、まさに今でいう「サクラ」になってしまう。
まぁ……事情を知らぬ人から見れば、誰かもわからぬ婆が大声で泣き始め、周りも釣られて泣きだすわけだから、確かに妖怪だと思われても不思議ではない。
泣き爺じゃなかったのは、女の涙はいくつになってもキクということなのだろうか。