妖怪うぃき的妖怪図鑑

妖怪うぃきから産まれた妖怪図鑑ブログ。妖怪の原点に触れ、もっと魑魅魍魎を知るきっかけになれば幸いです。

お酒ちょーだい、のた坊主

のた坊主

のたのたと酔っぱらって歩くことからこの名前が付いたのた坊主。

古狸の化けた妖怪であり、とにかくお酒が好き。

愛知県に伝わる伝承では、酒蔵に勝手に入り込んできて出来立ての酒を勝手に飲み、いい気分になるとそのままのたのたと逃げて行くのだという。

しかし酒を盗み飲みされるのを酒蔵側がただ黙って見過ごすわけはない。

 

――ある年、いつものように古狸がのた坊主に化けて酒蔵へとやってきた。

いつもとは違い、のた坊主の姿を見ても誰も何も言わず、ただただ忙しそうに働いている。

少し訝しみはしたものの、これはラッキーと思い、のた坊主はたらふく出来立ての酒を飲んだ。

しかしこれはワナだった。

いつも以上に飲み過ぎてフラフラになったのた坊主を、すわ好機と酒蔵の従業員が総出で捕まえ、縄で縛り上げた。

捕らえられたのた坊主は涙を流して許しを請う。けれども店の主人も使用人も決して許そうとはしなかった。

そこへ現れたのが店の主人の母親。

母親は「縄を解いて解放してあげなさい」と皆に言った。

いやしかし、そんなことをしたら――と皆が口々に言う中、主人の母親はさらに驚く事を言った。

「こいつが酒を盗みに来て困っているのならば、逆にこいつの元へ毎年酒を届けてやればいい」

( ゚д゚)?

と皆は唖然としたが、その命に従いのた坊主を解放し、更に毎年酒を届ける約束もした。

するとそれ以降、その酒蔵の酒は大いに評判になり、大繁盛したそうな。のた坊主がきっと恩返しにと何かを取り計らってくれたのだろう。

めでたしめでたし。

 

――恩を返してもらうという典型的なパターンの話である。

そしてやっぱり狸という奴はどこか憎めないキャラクターとして描かれている。

とにかく狸という奴は色々な意味でズルイヤツだとつくづく思う。