布引滝悪源太義平霊討難波次郎
『新形三十六怪撰』より「布引滝悪源太義平霊討難波」
黒雲より出でし鎌倉悪源太、難波経房へ約束通りの逆襲!
という図である。
この鎌倉悪源太という異名で呼ばれたのは、ご存知源頼朝のお兄さん。
非常に勇ましい人物であったようで、強い、たくましいという意味で「悪源太」と呼ばれるようになった。
そして平治の乱にて父、義朝を平氏に殺され、義平は玉砕覚悟で復讐することを誓う。
しかし生け捕りにされてしまい、六条河原にて処刑されることに。
その際執行人となったのが難波経房。
「おい、俺様をこんなところで斬るとは大層だな。見てろよ、首だけになっても貴様を殺してやる」
「ほう。一体斬られた首に何ができるものか」
「ふん、俺は雷になるのさ。そしてお前を蹴り殺す!」
ーーそんなやり取りがあり、義平は難波経房によって斬首された。
その数年後、難波経房が平清盛に従って布引滝を見物していた時のこと。突然黒雲が立ち込めて雨になり、難波経房は雷に打たれて死んだのだという。
芳年が描いたのは、まさにはその黒雲より出でし悪源太の姿であろう。
多分に脚色されてはいるだろうが、なんともシビれるかっこいい話である。