チュパカブラと見せかけて牛打ち坊(うしうちぼう)
牛打ち坊(うしうちぼう)
チュパカブラ。
幼い頃にテレビで見たチュパカブラは、僕の中でのトラウマUMAである。
チュパカブラは、夜間に家畜を襲い血を吸いつくしてしまう怪物で、目撃例も多い。人を襲う例もあるようで、よく言われる容姿の「大きな目玉、背中のとげ、二足歩行ですごいジャンプ力」は、想像するだに恐ろしく、インパクト十分である。
しかしなんと、日本にもチュパカブラと似た特性の妖怪がいた!
それこそが牛打ち坊である。
牛打ち坊は徳島県に伝わる妖怪で、やはりチュパカブラのように血を吸ったり、わずかに傷をつけただけで死んでしまう。さらには牛馬は牛打ち坊を見ただけで死んでしまうとも言い、チュパカブラよりも強力である。
ーーで、ここからはマジな話だが、チュパカブラも近年では野犬やコヨーテなどが正体だというのが最有力になってきているらしい。
また、日本の牛打ち坊に「二本の牙で血を吸う」という情報が加えられたのは平成に入ってからで、そこは明らかにチュパカブラを意識した創作であると思われる。
牛打ち坊は恐らく、牛馬が突然死することなどを説明するために生まれた妖怪で、目撃例もあるチュパカブラとは似てはいても元は違うのだろう。
その証拠に牛打ち坊には妖怪特有の「退治譚」もあり、UMAというよりはまじない的意味を多く含んだ、やはり「妖怪」と呼ぶべきものだろうと思える。
ーーこのように、海外UMAと日本の妖怪を比べると、妖怪の本質とも言える「におい」がよくわかる。
地域に根差した、信仰のにおい。日本的な文化のにおい。
チュパカブラが、名前も言い伝えも凶悪で怖いだけなのに比べ、牛打ち坊はどこか可愛げのある響き。
そこが妖怪のイイトコロ。