河童に稽古「白藤源太」
『和漢百物語』より「白藤源太」
河童の相撲を上から悠々と団扇を扇ぎながら眺めている力士、白藤源太。
この白藤源太は歌舞伎や謡曲などでよく登場した、伝説上の力士である。
しかし歌舞伎などの最強力士な設定とは裏腹に、実在した白藤源太は結構悲惨な運命を辿っている。
千葉県に生まれ、大柄で力もあったことから江戸に出て力士を目指す。いっときは有名になることもあったのだが、後に破門され、生まれた村に帰って酒と喧嘩三昧の日々を過ごした。そして村の村人に、酒に酔わされた挙句殺されてしまうという、非常に悲しい最後を迎えている。
そんな白藤源太がなぜかくも歌舞伎などで英雄視されたのかは謎だが、とにかく後世には「伝説的力士」として伝わったのだから少しは救いがあるのかも知れない。
さて、この『和漢百物語』の絵は、解説文には「ある夏に源太が柳の木の下で佇んでいると河童が勝負を挑んできた。源太は一喝して、その河童を投げ殺した」
とある。
え、投げ殺した?
絵を見る限りではそんな光景には見えないのだが、解説文によれば源太は河童を余裕で「投げ殺せる」ほどの力士だったようだ。
しかしそんな源太にわざわざ勝負をいどむのだから、河童も相当な相撲馬鹿なのであろう。