米磨ぎ荒神様
米磨ぎ荒神様(こめとぎこうじんさま)
「お米磨ぎやしょか、人取って食いやしょか、しょきしょき」
でお馴染み。 なんだただの小豆あら……じゃないのである。
米磨ぎ荒神様は長野県小諸市に伝わる音のみの怪異であり、全国に広がる小豆洗い系怪異と似たような文句と共に伝わっている。
ただ、時に川の水が白く濁り、それを見ると「あぁ荒神様が米を磨いでらっしゃる」と解ったとも言うから、若干小豆洗いの伝承とは異なる。
それより何より、この妖怪の気になるトコロは、荒神様がその正体、というところである。
荒神はそもそもは良いイメージではなかった荒ぶる神なわけだが、時代と共にそのイメージは変わって行き、江戸時代にはほとんどの家庭の台所には三宝荒神像が飾られていたとも言うのでそうとう流行ったのだろう。
が、その元を辿ると色々な神様に行き着いてしまい全体像ははっきりしない。
しかしながら台所と荒神様はとかく縁があるので、荒神が米を磨ぐ――というのも割と自然な発想ではあるのだ。
で。
よく考えてみると、小豆洗いを筆頭に、「誰が」小豆を洗っているのか? が名前から解る妖怪というのは少ない。米とぎ婆なんかは婆だが、小豆洗いは、特に誰が小豆を磨いでいるのか名前からはわからない。
もちろん音のみの怪異であるから正体をあえて名前に付ける必要がなかったのかも知れないが、もしかしたら、「荒神様の仕業」というのも遡ってみると一つの起源にあるんじゃないかという気もする。
他には、三宝荒神なんかは修験道の開祖、役小角(えんのおづぬ)が感得したのが起源と言われる。
そこらへんから勘繰ると、山伏が米や小豆を川で洗っていたのが起源で、後に妖怪視されたんじゃないか――とも思える。その説だと荒神とも割とすんなり繋がるのである。
一般論を疑いちょっと違った視点で見てみるだけで、全然違うモノに繋がる可能性が生れる。もっともっと知識があれば、もっともっと魑魅魍魎に憑かれるような体験ができるんだろうなぁ、と思う。
妖怪ってこわい。