おらこんな村ぁ屁の河童!
屁の河童!
この国の言葉には、沢山の妖怪が隠れています。妖怪名なんて全然知らないし、妖怪にも興味無い。――そんな風に思っている人でも、慣れ親しんだ言葉の中にはうようよと魑魅魍魎が潜んでいて、日常的にソイツラはあなたの口から飛び出しているのです。
「木っ端の火」、という言葉をご存知でしょうか?
木っ端、つまり木の切れ端です。これに火を点ければ、当然切れ端ですからすぐに燃え尽きてしまいます。この事から、木っ端の火はあっけのないことや、大したことないことに対して使われる言葉となりました。
ではここで一旦逸れまして、よしいくぞう! と気合を入れましょう。
↑をよく噛みしめて聞いた上で、話を戻して、よしいくぞう! な気分を盛り上げつつ読んでみてください。
木っ端の火。
いんやちげぇ。
河童の屁ぇだ!
つまり、何らかの訛りで転じたのが「河童の屁」だと云われています。
しかしまだなじみ深い言葉とはちょっと違いますね。
そこでなんでも流行りに乗せて粋だ野暮だと五月蠅い江戸っ子の登場です。
「河童の屁ぇだぁ? 語呂が悪くっていけねぇや。サカサマに読むってぇのが粋ってもんよ! それ屁の河童!」
と、いうわけで晴れて河童の屁はみんな大好き屁の河童へと進化したのです。
屁の河童、の由来には、もう一つ「河童の屁は水中で放たれる為に勢いが無く、その情けなく大したこと無い様を言うようになった」とする説もあるのですが、木っ端の火をよしいくぞうしちゃって江戸っ子がこねくり回した――と考えた方が今も使われている屁の河童の意味からしても自然かと思われます。
さぁ、皆さんも「余裕」だとか、「平気」だとか、「大丈夫」だとか、そんな野暮な言い方とはサヨナラして、なんでもかんでも「屁の河童」にしちゃってみると、少しだけ幸せな気分になれると思います。
お金もねぇ、女もねぇ、大金このかた見た事ねぇ。
車もねぇ、あるわけねぇ、だけど生活屁の河童! ガァッ!