魑魅(すだま)の謎
魑魅
魑魅魍魎の前半部分担当で大御所だと思われる妖怪魑魅(すだま)。
しかし魍魎(もうりょう)は随分と有名で活躍しているのに対し、魑魅の名はほぼ聞くことがない。
一例を挙げると、僕の手元にあるおそらくほとんどの妖怪が、別称含め載っていると思われる『日本妖怪大事典』(水木しげる画、村上健司編)にも、なんと魑魅の記述は無いのだ。見落としてたら申し訳ないが、チミ、でも、スダマ、でも無かったので間違いないとは思う。
辞書を引いてみると、魑魅は――
・山から出る瘴気から生まれた精霊。
・魍魎に同じ。
とある。
一方、魑魅魍魎の魍魎は――
・山、水、木、石などから生じる瘴気から生まれた精霊。
・水の神。
となっている。
また、魑も魅も魍も魎も、化け物の事を指すらしい。
それもそのはず、字を見ればすぐに解ることだが、どの漢字も鬼が入っており、平安時代から使われている言葉だということからも、後の時代での「妖怪」と似たようなニュアンスで使われていた「鬼」の、種類なんかを現していたんじゃなかろうか、と雑に推測してみる。
で、魍魎は中国の古書などにも記述がある罔両が原型となり、日本神話の罔象女神(ミツハノメノカミ)とリンクしたり獣だなんだと言われたり死者を喰らうから火車なんじゃねーかと言われたりアセバンダリラジバンダリした挙句現在のように落ち着いた(全く落ち着いてないんだけど)。
――一方の魑魅は、平安時代の書でも「鬼の一種」みたいなパッとしない記述でなんだか可哀相である。
しかし――僕はここになんだかオカルトな臭いを感じるのである。
なぜ、水木先生の大事典(大辞典、じゃないんです)にもその名がないのか?
また、鳥山石燕も魍魎は描いたのになぜ魑魅は描かなかったのか?
石燕の描いた魍魎↑
なぜ石燕は、邪魅なんていうオシイ妖怪は描いたのに魑魅は描かなかったのか?
こちらは邪魅。解説文には、「魑魅の類なり」と書いてある。
これはまさか、妖怪界の禁忌(タブー)ってヤツなんじゃなかろうか!