矛担(ほこかつぎ)
『百鬼夜行絵巻』(真珠庵本)より「矛担」
現存する百鬼夜行絵巻の中でも、最古のものとされながらも、後発の絵巻にも全く劣らない素晴らしい絵巻が『百鬼夜行絵巻』の真珠庵所蔵、通称『真珠庵本』。
その絵巻で最初に描かれているのが、この妖怪「矛担(ほこかつぎ)」。
冠を戴き、手には矛を持つ。
これから描かれていく魑魅魍魎を追い立てるかのように、「さぁ行くよゥ!」といった勢いである。
この妖怪は、古来より武器として用いられ、かつ神聖な物とされてきた「矛」が、時代の移り変わりとともにあまり使われなくなり、その怨みで妖怪化したのだという。
古くからのものを軽んじた事により生まれた青鬼。矛の妖怪。
百鬼夜行を始めるにあたり、実に相応しい妖怪ではないか。
百鬼夜行絵巻に描かれている妖怪の多くは器物に宿る付喪神であり、そういった意味で言えばこれ以上無い最初の妖怪なのだ。たぶん。
尚、矛担について調べていた際、どこかの誰かが「佐川急便」とこの矛担に命名していてニヤっとしてしまったのはここだけの話。