現代にもいしなげんじょ
いしなげんじょ
どういう漢字を当てるのが正解か迷うところだが、とにかく「いしなげんじょ」は五月の靄のかかった晩に現れるという音のみの妖怪である。
石投げ女とする場合や、石投げ尉とする場合もあるのだが、姿の無い妖怪と言われているわけで結局どちらにすべきかは判然としていない。
いしなげんじょが起こす音は、まるで大岩が崩れ落ちる音のようだが、翌朝靄の晴れた時にその場所を訪れても何も無いのだという。
大岩が崩れ落ちるような音なのに「いわなげんじょ」にならなかったのはなぜだろうか?
もしかしたら、「石なご」という女児の遊戯(お手玉みたいなもん)と言葉遊びで掛けられてできた妖怪――とは考えられないだろうか。もしかしたら。
――それはさておき。
今年の3月21日に実際に起きたいしなげんじょと関係がありそうな事件がある。
概要は、元カレにTwitterで悪口を言われた女が、今カレと共に元カレを海に突き落とし、さらに投石して殺害しようとした――という恐ろしい事件である。
現代のいしなげんじょは、何の捻りも無くマジに石を投げる恐ろしい妖怪と化してしまったのだろうか。
幸い元カレも死なずに助かったのだが、まさか投石で死にかけるとは思わなかっただろう。というより、Twitterでつぶやいただけで死にかけるとは思わなかっただろう。
やっぱり人間の方がずっと怖い。