一本だたら(いっぽんだたら)
一本だたら
山中奥深くに棲息していると言われる一つ目、一本足の妖怪、一本だたら。
熊野(現和歌山県らへん)に古くから伝わる伝説の一つに、「一踏鞴(ひとつたたら)」という盗賊の話がある。これは怪力無双の化け物のような男で、一つ目、一本足だったという。この一踏鞴の伝説は、書によって扱いが異なり、最初から「バケモノ」としているものもあれば単に「盗賊」としているものもある。
が、とにかく一本ダタラの名前の原型になったのは間違いないのではないかと思う。
一本ダタラは、その特徴も伝承ごとに異なり、↑の絵のように柱に目が付いただけのような容姿とも言われれば、皿を頭に載せた化け物とも言われる。
なぜ一本足なのか? ということは、一つ目小僧でも触れたように多くの複雑な経緯を経ていると思われ、はっきりと解ってはいない。
ただ、多くの地域で山の神は一本足、というイメージがあったようで、同時に多くの地域で同じように伝わるということは何らかの大きな「原因」があるのだろうとは思う。
元になっているのが中国である可能性も高く、例えば鳥山石燕が描いた「山精」なんかは片足の妖怪で中国に伝わる妖怪、と解説されている。
また、一本だたらはタタラ師(鍛冶)が重労働により片目は潰れ片足も衰えるから、という由来が有名であるが、そういう化け物がいてそれをタタラ師にこじつけて呼んだのか、またはタタラ師そのものをそのように化け物扱いするようになったのかどうか、という事は不明である。(更に、その辺の情報は日本神話の鍛冶の神にまで波及しており、複雑さは無限大である)
――とにかく、多くの伝承では人を襲うことが多いと書かれているため、もしらしき妖怪に遭遇してしまったら全力で逃げるか、足払いを試みるといいかも知れない。
名前に反して由来は複雑で面倒くさい一本ダタラ。由来も解りやすく筋の通った一本だったらなぁ。