海御前(あまごぜん)
海御前(あまごぜん)
海御前は九州に伝わるメスの河童。
河童なのに性別が指定されている上に、名前も随分と偉そうに「御前」などと付いているが、これにはちゃんとワケがある。
九州といえば平家滅亡の最後の戦いである壇ノ浦の戦いの地であり、平家の怨霊には事欠かない。
実はこの海御前もその関係者である。
海御前は、平清盛の甥にあたる平教経(たいらののりつね)の妻(または母親とも言われる)の怨霊が河童となり、福岡に流れ着いたのだとされている。
故に名前にも御前が付き、性別もメス(って言っていいものか判じかねるが)なのである。
この海御前、元が平家の者だけあって少し変わった性質を持っている。
身分の為か、河童の中でも親分格な海御前は、5月5日になると「お前たち、どこへでも遊びに行っていいよ」と河童たちを自由にするのだが、必ず約束事として「ただし、蕎麦の花が咲く前には帰っておいで」と言う。
理由はシンプルで、蕎麦の花の色が源氏の旗印のベースとなる白色だからである(平氏は赤)。源氏色は見たくもなかったのだろう。
また、たまに人を襲うこともあったようだが、襲うのは必ず源氏方の人間だけだったと言う。
さすが平氏の女、徹底している。
因みに、壇ノ浦の戦いで散った者は、女は海御前の手下の河童に、武将達は平家蟹(へいけがに)へと化けたのだそうだ。
蟹と河童……武将さん達はもう少しなんとかならなかったのだろうか。