妖怪うぃき的妖怪図鑑

妖怪うぃきから産まれた妖怪図鑑ブログ。妖怪の原点に触れ、もっと魑魅魍魎を知るきっかけになれば幸いです。

小早川隆景彦山ノ天狗問答之図

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『新形三十六怪撰』より「小早川隆景彦山ノ天狗問答之図」
 
戦国通なら言わずもがなだとは思うが、知らない方の為に――
小早川隆景は、毛利元就の三男である。「なんで名字が毛利じゃないのさ」と思ったあなたは戦国時代のややこしいお家関係を勉強してらっしゃい! ……と誤魔化すのはやめて、要は小早川家が跡取りいなくて困ったので毛利さんお願いしますお子さんを我が家の跡取りに――ということである。
毛利元就の息子達と言えば名将揃いで有名であるが、この隆景は秀吉に「この世界で政治がまともに出来るのは隆景と兼続(直江兼続。愛、の人)だけだ」と言わしめたほどである。
 
で、芳年の描いたこの絵は、秀吉が朝鮮へ攻め込む際に船が必要で、それを作る為の木材を彦山から伐採すべく隆景を送り込んだ時の話。
そこは未だ森林伐採など一度もされたことの無い場所で、住んでいた大天狗、豊前坊が「おいこらやめろ隆景コンチクショー」と現れた時の問答である。以下、すごく僕なりに解釈してその問答を書いておく。
 
「おい。この山は一度も伐採などされていない聖なる山だぞ。隆景の名はよく聞くし、すごくまともでデキルヤツと聞いていたのに何でだ?」
「ほう。到底彦山の天狗が言うようなセリフとは思えないな。いいか、俺は何も私利私欲でここに木を切りに来たんじゃない。天下の秀吉様の命令で来たんだよ。つまりそれは天下の下知、何人たりとも背くことのできない天子の命だぞ! 貴様はそれを無視するって言うのか? えぇ? そしたら例え天狗だろうがマズイことになると思うぞ?」
「……うん、じゃあしょうがないね。どうぞお好きに」
 
問答と言うよりはただ天狗が言いくるめられただけのようにも思えるが。
 
それよりも、この絵はとても奇抜な構図になっているのが面白い。隆景勢は斜めのラインでブワーっと遮られており、僅かしか見えない。堂々たる天狗を前にしても、僅かな隙間から見える隆景勢が臆していないのが解る。
毛利をなめるな! といった勢いに、さすがの天狗も心と鼻が折れてしまったのだろう。